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戸田恵梨香「役が抜けなかった」 『大恋愛~僕を忘れる君と』で見る“すごみ”

エンタメ

■ムロツヨシにメール「役が抜けないんです」

 そんな中『大恋愛~僕を忘れる君と』の撮影後は、なかなか役が抜けず、次の仕事が入れられなかったというのだ。しかも共演したムロツヨシにも「役が抜けないんです」とメールをし、そんなことを共演者に伝えたこともなかったとインタビューでは語っていた。

 戸田が演じた尚は、レディースクリニックに勤務する女医。堂明大学附属病院のエリート精神科医・井原侑市(松岡昌宏)と婚約していたが、自身が心から愛する小説の作者・間宮真司(ムロツヨシ)と運命的な出会いを果たし、恋に落ちる。しかし、事故をきっかけに若年性アルツハイマーに進行してしまう可能性があることが判明し、辛い未来を抱えながら懸命に生きる女性を演じた。

 非常にタフなヒロインであり、戸田自身も放送前の特別試写会で「いまだかつてない難役」と覚悟を持って臨んでいることを明かすと、台本上泣いてはいけないところで涙を流してしまうこともあるなど、今まで経験のないほど感情のコントロールが難しい役だと語っていた。

 そこまで戸田に言わしめた尚という役。この言葉通り、観ている側も、尚と真司の感情のぶつかり合いに心を持っていかれる。これまでの作品も、非常に個性的な役を演じ、戸田の芝居の上手さは多くの監督やプロデューサーが評価していた。しかし(正式な撮影時期の時系列は未定だが)、戸田が30歳を迎えた2018年ごろから公開、放送された本作や、『スカーレット』、映画『あの日のオルガン』で演じたキャラクターは、芝居の技術というものを超えて訴えかけてくる主人公の“思いの熱量”が圧倒的だった。

 このことについて『あの日のオルガン』のインタビューでは、(すてきな作品と出会えて)運が良かったと謙遜していたが、自身の中でも若い頃とは芝居に対する向き合い方が大きく変わったことを挙げていた。若い頃は“芝居の実力”をつけることに捉われていたというが、現在は“物語のテーマをいかに表現するか”に重きを置くようになったというのだ。

 まさに『大恋愛~僕を忘れる君と』では、未来に翻ろうされる一人の女性を、これまで得た芝居のテクニックでコントロールできないほどの湧き出る感情で演じ切った。だからこそ、役が抜けなかったのだろう。

 現在、過去のドラマの特別篇が多数オンエアされ、いろいろな戸田を観ることができる。どれも魅力的だが、『大恋愛~僕を忘れる君と』では、かわいらしさや天真らんまんさ、芝居の上手さはもちろん、“人間を表現するすごみ”も垣間見ることができる。(文:磯部正和)

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