恋愛ドラマにハマれない人こそ夢中になる『大豆田とわ子と三人の元夫』の魅力

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『着飾る恋には理由があって』(TBS系)、『恋はDeepに』(日本テレビ)、『レンアイ漫画家』(フジテレビ系)を筆頭に、恋愛ドラマが豊富と言われる4月期。その一方で、恋愛が描かれるにもかかわらず、”壁ドン・ツンデレ・あごクイ”的な近年の恋愛ドラマにどうにもハマれない人たちが夢中になっているのが、松たか子主演の『大豆田とわ子と三人の元夫』(カンテレ・フジテレビ系)だろう。
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■オシャレで、ハイセンス…を楽しむドラマではない
本作は、松たか子演じる「バツ3」子持ち社長のとわ子が、3人の元夫に振り回されながら日々奮闘する姿を描くロマンチックコメディーだ。
ドラマ好きに絶大な人気を誇る『カルテット』(TBS系/2017年放送)の坂元裕二脚本×松たか子主演×松田龍平出演が再集結した作品であり、プロデューサー・佐野亜裕美は『カルテット』のプロデューサーで、TBSテレビドラマ制作部所属から関西テレビ放送所属になった人でもある。
すさまじい情報量をリズミカルに高速で処理していく伊藤沙莉のナレーションは、彼女が声優を務めたアニメ『映像研には手を出すな!』を思い出させるし、『映像研~』と同じく湯浅政明監督が手掛けた森見登美彦原作のアニメ『四畳半神話大系』のようでもある。つまり、カルチャー度がずば抜けて高いのだ。
しかも、映像は美しく、松たか子が歌とラップを担当・毎回異なるアーティストとのコラボ・映像が楽しめるエンディングはシャレているし、衣装も小物もハイセンスだし、元夫たちはモテまくりのギャルソン(松田龍平)と、カメラマン(東京03・角田晃弘)、弁護士(岡田将生)とタイプ違いだし…。
ただし、要素を羅列していくと、グッとくる人にはたまらない一方で、「小賢しい」「お腹いっぱい」「面倒臭そう」などと身構える人もいるかもしれない。だからこそ、ここで強調しておきたいのは、「オシャレで、ハイセンスで、庶民とは遠い世界の恋愛模様を楽しむドラマではない」ということだ。
物語は、とわ子の亡き母のメールが開けないことから、パスワードを変えようとすると「秘密の質問:はじめて飼ったペットの名前は?」と表示されるところから始まる。設定したのはおそらく3人の元夫の誰かであることから、全員に聞くしかないという事態になるのだが、そこからとわ子がモテまくる物語ではない。
確かに元夫たちは、今もとわ子に未練がありそうだ。しかし、とわ子抜きで最初の夫の店に足を運んでは、とわ子の話をサカナに、あるいはとわ子と全く関係のない話題で、3人で勝手に交流を持ち始めている。なんなら「とわ子」という未練が介在しないときのほうが、楽しそうにすら見えることだってある。
しかも、とわ子が「美人」であること、「バツ3」ということは事実だが、決して自由奔放に次々に新しい恋を楽しんでいるわけではない。それが回を重ねるごとに徐々に明らかになっていく。