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『風立ちぬ』冒頭で明かされるヒロインの結末 ジブリの難解作に込めた宮崎駿の真意とは

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■「風立ちぬ」は穏やかな風ではない

 タイトルの『風立ちぬ』は、堀の同名小説の冒頭にて掲げられているポール・ヴァレリーの詩『海辺の墓地』の一節「Le vent se leve, il faut tenter de vivre.」を堀が訳した「風立ちぬ、いざ生きめやも」という有名な詩句からきている。宮崎監督は「原発が爆発したあとに轟々と吹く風と木がうわーって揺れている様子を見て、『風立ちぬ』というのはこういうことなんだと思った」と語っている。さわやかに吹いているのではなく、轟々と吹く。そんな恐ろしい風の中ならば、必死で「生きようとしなければならない」。自然に解釈するなら「いざ生きめやも」は「生きようとしたけれども」という反語になるのが自然だが、許嫁を亡くした後に執筆したこともあり、そう書かざるを得なかったのだろう、と宮崎監督は推測している。

映画『風立ちぬ』より 写真提供:AFLO
 なお、アニメスタジオ・ガイナックスの創設者兼元取締役で株式会社オタキング代表取締役・岡田斗司夫氏は、「風立ちぬ、いざ生きめやも」という序曲が映画の全体像を表すものだとしたうえで、映画冒頭のタイトルでポール・ヴァレリーと併せてわざわざ「堀辰雄」と表記されている意味について、自身の公式YouTubeチャンネルで解説。

 堀の小説内では「イーゼルが風で倒れるという描写は恋人が死んでしまう前兆であることを表現している」と述べ、この部分が分かっていると、作中で「菜穂子が軽井沢の高原で絵を描いているシーンでイーゼルが倒れるということは、菜穂子が死ぬ運命だと分かる」という。宮崎監督はそれが分かるように作っており、あえて堀の名前を表記したのは「この話が堀辰雄の『風立ちぬ』に沿って展開します、というサインでもある」、つまり宮崎監督は、分かる人には冒頭のタイトルの時点で菜穂子の結末が分かるように映画を作っている、と説明している。

 実在の人物がモチーフ、映画の主人公がヒロイックに描かれないなど、ジブリ作品の中で異色ともいえる内容で、それでも多くのファンを獲得した『風立ちぬ』。それはあれこれと考えずとも大変に楽しめる作品の証明ではあるが、少し視点を変えて新しい解釈で見るのも面白いかもしれない。

 映画『風立ちぬ』は、日本テレビ系『金曜ロードショー』にて8月27日21時放送。

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