「すべて悪魔のせい」と無罪を訴えた前代未聞の実話“アーニー・ジョンソン事件”とは
実在したアメリカ屈指の超常現象研究家であり、凄腕ゴーストハンターとして活躍したウォーレン夫妻。夫のエドはローマ教会が唯一公認する非聖職者の悪魔研究家で、妻ロレインは優れた透視能力を持つ霊能力者。彼らの秘蔵する実録怪奇事件簿を映画化した『死霊館』シリーズは全世界で2100億円超えの興行収入を達成。新作『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』は実に7本目のユニバース作品となる。今回の物語はアメリカ史上初、悪魔憑き殺人事件の立証が法廷で争われた有名なアーニー・ジョンソン事件の実話が元ネタ。しかし、その「実話」は一体どこまでが「事実」なのか。実際の事件のあらましをたどってみたい。
【写真】ウォーターベッドに浮かぶ“邪悪な顔”、襲われる少年! 『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』より
■11歳の少年が目撃した見知らぬ老人
問題の事件が起きたのは1981年2月16日。コネチカット州ブルックフィールドで、造園土木業に従事する19歳のアーニー・ジョンソンが、家主のアラン・ボノ(当時40歳、映画での名前はブルーノ・ソールズ)をナイフで複数回刺して殺害。凄惨な犯行にも関わらず、彼は弁護士と共に「すべて悪魔のせい」と無罪を主張。前代未聞の裁判に全米が震撼した。
惨劇の直前、アーニーは婚約者のデビー・グラッツェルと新居の借家へ移り住んだ。だが、引越しの手伝いに来たデビーの11歳の弟デイビッドは、前の住人が使用していた奇妙なシミのあるベッド(映画ではウォーターベッドに変更)が置かれた寝室から血相を変えて飛び出し、見知らぬ老人に突き飛ばされたと訴えた。
もちろん、そんな老人はどこにもいない。幼稚な子供の嘘だろうと2人は笑ったが、デイビッドは庭へ逃げ、2度と家には入らなかった。
写真は映画『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』より、恐怖のウォーターベッドシーン (C)2021 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved
デビーの実家でも不可解な現象が起きる。屋根裏で怪音が響き、デビーと母親の目の前で、デイビッドが見えない何者かに殴られ、首を締められて窒息寸前となり、原因不明の傷やアザが皮膚に現れた。少年は昼夜問わず幻影に怯え、「姉が新居に来たら危害を加える」と邪悪な老人が警告していると告げた。
一家は教会にお清めの儀式を依頼するが効果はなく、困り果ててウォーレン夫妻に相談。屋敷を訪れたロレインは、太い男の声で招かれざる客を威嚇(いかく)する少年の隣に、黒い霧状の邪悪な存在を霊視する。
■悪魔を挑発してしまったアーニー
ウォーレン夫妻は相手が少年であることを考慮し、小規模な悪魔祓いを複数回施そうと提案。しかし、デイビッドは頻繁に痙攣の発作を起こし、ロレインは彼が空中を漂うのを目撃。一家は疲弊し、感情的になったアーニーはつい、「俺に憑依してみろ」と悪魔を挑発してしまう。
数日後、アーニーの愛車が突然、暴走して樹木に突っ込むという出来事が起きた。釈然としない彼が向かったのは、自宅の借家を囲む森の奥にある古井戸。そこはデイビッドが悪魔を見たと訴え、ウォーレン夫妻も近づくなと忠告した場所だった。アーニーが暗い井戸の底に目を凝らすと、こちらを見上げる魔物と目があってしまった。
写真は映画『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』より、悪魔に憑依されたアーニー (C)2021 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved
遂に借家を離れることを決意したアーニーは、犬の美容師であるデビーが勤めるケンネルの経営者アラン・ボノに頼み、近隣のアパートに恋人と身を寄せた。しかし、怪現象はおさまらず、アーニーは度々没我状態に陥り、幻覚を見るようになる。