北村匠海 “どっちつかず”と言われない「芝居と音楽の両立」へ 自身のキャリアへの思い
俳優のほか、アーティストとしても活躍している北村匠海。そんな彼が最新映画『とんび』で、昭和から令和まで時代が移ろう中、普遍的な“家族の絆”を父親役の阿部寛と共に体現した。北村が演じたアキラのように、北村自身が年上世代から受け取ったこと、そして年下世代に伝えたいことを聞いたところ、音楽活動と両立する自身のキャリアへの熱い思いが飛び出した。
【写真】真っ直ぐカメラを見据える北村匠海 撮り下ろしインタビューカット<全8枚>
■ 何度も映像化される『とんび』は「時代を超えて共感できる作品」
重松清の同名小説を映画化した『とんび』。北村は、阿部ふんする父・ヤスと母・美佐子(麻生久美子)の息子として生まれるも、母を事故で亡くしてしまい、不器用なヤスとぶつかり合いながらも、父親や町の人たちの大きな愛で育てられた息子・アキラの、思春期から大人の男性になるまでの長期間を演じた。
これまで「とんび」という小説は何度も映像化されてきたが、北村はメガホンをとった瀬々敬久監督から「北村匠海が演じるアキラでいい」と言われていたことを明かすと「僕もそうなのですが、人って実は18歳ぐらいからあまり変わらないような気がするので、若いころは学生らしさみたいなものは意識しましたが、途中からは引き算のお芝居というか、自然な感じで妙に作り込むようなことはしませんでした」と役へのアプローチ方法を語る。
また、過去2度ドラマ化されている作品への出演について北村は「ベストセラー小説からはじまり、何度も映像化されているということ自体が、時代を超えて共感できる作品である証だと思いました。きっとまた次の時代にも受け継がれていくんだろうなと思うと、令和に制作された『とんび』に出演させていただけることは、とても光栄だなと感じて『ぜひやらせてください』と言いました」とオファーを受けた理由を述べる。
■ 理想の夫婦像は両親 “友達感覚でもいられる父子像”への強い憧れ
時代や生活様式が変わっても、変わらない家族の絆。北村が演じたアキラは、ヤスの子である一方で、自身も成長し家族を持ち父親となる。作品の中で子として、親として“家族”に向き合う。「これまで何度か父親役を演じたことはありますが、改めて父親として役と深く向き合うことができました。自分が結婚して子どもができたとき、こんな感じなのかなと思う瞬間は結構ありました」。
劇中で父親役を演じた北村は「自分が父親になって、子どもと接していく中で、自分が子どものころに父親に抱いていた感情がリンクしていく感じがあったんです。そのとき、自分はこの父親の子どもなんだなと、血のつながりを感じる瞬間がありました」。どのようないきさつがあろうとも、そして時代が変わろうとも、親子というものには普遍的な絆があることを感じたという。
そんな北村にとっての理想の父親像とは――。「僕は自分の両親が憧れの夫婦像そのものなんですよね」と話し出すと「父母がすごく仲が良いのはいいなと思いますし、父が好きなものに僕も弟も影響を受けているので、趣味が一緒なんです。その意味で、父親でありつつ、友達感覚でもいられる。僕もそんな父子像には強い憧れがあります」と語る。
今年25歳になる北村。彼が父親になるときには、『とんび』で描かれている昭和の父親像とは大きく変わっているように感じられる。北村自身もこれを認め、「僕らや僕らの後輩は、いわゆる平成の父親像みたいなものを眺めながら育ってきたと思うんです。基本的には平和主義で、柔らかいというか…親が共働きなのは当たり前になっていますし、たぶん“一家の大黒柱”みたいなイメージも薄くなっていく時代なんだと思います」。