『カメ止め』以降も活躍続く濱津隆之 俳優で売れることは「あまり大切じゃない」
そんな中、2011年に俳優業に進んでから10年以上の歳月が流れた。2017年に上映された主演映画『カメラを止めるな!』で、一気に知名度が上がり、その後は映像の世界にも引っ張りだこだ。そして本作でも、第一線級で活躍する俳優たちと同様の舞台に立った。
「改めて客観的に見ると、人気者ばかりの舞台挨拶に自分も登壇しているというのはすごいことだなと思うんです。でも変な言い方ですが、なにかが大きく変わったなんてまったく思っていないし、キャリアを積んできているな…なんて感じたこともない。ただただその場で必死にやっているだけなんです」。
とは言いつつ、濱津の周囲を取り巻く環境は確実に変化しているのは事実だろう。
「まあ、確かに『キングダム』の舞台挨拶でもそうですが、すごいステージだなということは感じました。もちろん“売れたい”とか“人気者になりたい”ということを目標にしている人だったら、やりがいを感じるのかもしれませんが、僕はそういう部分が大事だと思っていない人間なので(笑)」。
濱津にとって、俳優業のモチベーションとはなんなのか。そこには「お金持ちになりたい」「おいしいものを食べたい」「チヤホヤされたい」などという俗っぽい欲はないのだろうか――。
「俳優としてというよりも、人生の中で一番大切にしているのは『どう生きて、どう死んでいくか』ということなので、俳優で売れるということは、自分の中ではあまり大切なことではないんです。お金も良い生活も、特に望んではいません。とにかく“面白そうだな”と興味があることを、フットワーク軽くやれれば、それだけで満足です」。
こうした考えは、もともと濱津の持つ資質なのか、それとも後天的に備わったものなのか。
「20代前半で芸人を志したときは、やっぱり同期の中では一番売れたいとか、前のめりに結構生き急いでいた気がします。でも先ほども話しましたが、やっぱりうまくいかないことも多いし、挫折もするわけです。するとだんだん逃げるというか、諦めることがダメなことじゃないんだと感じるようになって…。そこからは、いまのような考えになっていきました」。
濱津いわく、「身の丈にあった生き方をした方がいいんだ」と肩の力を抜いて、自分自身を素直に出すことで、周囲からよく声をかけてもらえるようになったという。
「俳優の道にたどり着いたときがちょうど30歳ぐらいだったのですが、『これが最後だから』と思って、少しだけ自分の考えを変えてイキった瞬間があったんです。とにかく経験だと思って、あまり面白いと思えなかった舞台にも応募してみたり…。でもやっぱり続かなくて、本当に自分たちのやっていることが面白いと思っている人たちとご一緒できればいいやと方向転換したら、自分のことも面白がってくれる人たちと出会えたんです」。
その出会いの一つが『カメラを止めるな!』のキャストやスタッフたち。ただ“面白いもの”に携わりたいという純粋な気持ちだけで、ここまでたどり着いた。だからこそ「このスタンスはきっと変わらないと思います。その中で求められたら嬉しいですね」と大きな環境の変化にもブレずに「どう生きるか」を追求していくことを誓っていた。(取材・文:磯部正和 写真:松林満美)
映画『キングダム2 遥かなる大地へ』は、7月15日より公開。
※山崎賢人の「崎」は「たつさき」が正式表記
※羌かいの「かい」は「やまいだれに鬼」が正式表記