岡田准一「撮影期間中は人間らしい生活は諦めるよね(笑)」 坂口健太郎も共感
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俳優の岡田准一と坂口健太郎が、日本版フィルム・ノワールで共演。しかも暴力団が擁する精鋭部隊のバディ役で――。字面だけでセンセーショナルなその映画の名は、9月16日公開の『ヘルドッグス』だ。深町秋生の小説を原作に、『関ヶ原』の原田眞人監督が美学を詰め込んだ本作は、全編怒涛のアクションで彩られた野心作。関東最大の広域暴力団・東鞘会に潜り込んだ潜入捜査官・兼高(岡田)は、危険すぎるサイコボーイとウワサされる室岡(坂口)を相棒に、会長の十朱(MIYAVI)の護衛を任されるまでにのし上がっていくが、正体がバレそうになる…。「怒涛」「ぶっ飛んでいる」と回想する現場で、岡田と坂口はどう「生きた」のか。貴重な裏話を語ってもらった。
【写真】『ヘルドッグス』サイコボーイ・坂口健太郎の新境地演技に痺れる!
■原田組のテイク数は尋常じゃない!
――非常に熱量を感じる作品でしたが、撮影のときは本番一発撮りのような感じか、それともものによってはテイクやリハーサルを重ねるのか、どういった形だったのでしょう。
岡田:原田監督はハリウッド方式というか、全方向から回数を重ね、テイク数の多い監督です。マスターとして引きを撮ってそこに基本的には合わせていくんですが、寄りになったら好きに動いていいですよというスタイル。「大体マスターと合っていれば編集でなんとかなるから」とハプニングも積極的に取り入れられていきます。
原田監督はテイクを重ねて素材をたくさん撮ることによって勢いやエネルギーを生み出し、ドキュメンタリー性と演出を付けたものの両方が混在した映像を目指されているので、アクションシーンもテイクを重ねますし、本当に全方向撮りますから。結構大変ですよ。
――テイクを重ねていくと鮮度は減ってしまうのかなとも思うのですが、寄りで自由にできるからこそテイクを重ねても新鮮な気持ちでやれる、という感じでしょうか。
岡田:元々の演出が「この立ち位置に立ってください。ここで座って台詞を言って下さい」というものではないんです。撮りやすいように人物を配置していくスタイルが多いと思いますが、原田監督はそうではなく、「君はどこにいたいの?」と出演者全員に求められるんです。
映画『ヘルドッグス』より (C)2022「ヘルドッグス」製作委員会
もちろん「カメラ位置がここだから気を遣って」とは役者に伝えるので、いま何を撮っているかは全員把握しています。「そこだと他の人とかぶっちゃうから見えるところで芝居しなきゃ」「この人を撮っているから、ここで抜けを作らないと」ということを役者自身が考えて動かないといけない。だから好き勝手にカメラの位置を気にせずに動くなんてことはできません。
そういう意味では毎回慣れないというか、同じことをやっていても求められることがどんどん変わっていくので、停滞することがないんです。カットごとに求められることが変わる特殊な現場だと思います。
坂口:すごくいろいろな脳みそを使いますよね。自由に動かしてくれるんだけど、そこで客観視できる目を持っていないと原田組の現場では成立しなくなってくる。僕は今回初参戦ですが、俳優陣に求められるスタートのクオリティがものすごく高いんだろうなと感じました。
■エキストラ全員に役名を付ける
岡田:ほとんどの作品は、エキストラの方は「エキストラ」という状態で「この辺りにいてください」という感覚を求めますが、原田組は出演者全員に役名があるんです。それは監督がすごく愛情を持っているからこそだと思うんですよね。だから、全員に求めるレベルが高いんです。
エキストラの方も役者ですし、全員が汗だくで、同じ条件で動いている。僕もそれを分かっているので、自分の位置取りなどを考えて、カメラ位置を気にしつつ動いたりしながら撮影をしていました。阿吽の呼吸といいますか、無言の会話が多い現場だと思います。
映画『ヘルドッグス』より (C)2022「ヘルドッグス」製作委員会
坂口:本当に一日一日が濃くて、すごくカッコつけた言い方をすると「今日も役を生きたな」という感覚を持っていました。1日の疲労感がすごかったけど、しんどい疲労感ではなく「やりきった」という心地よい疲労感というか。そういった毎日の連続で、いつの間にか最終日を迎えた感覚でした。
ただ、室岡のことだけ考えすぎてのめり込んでしまうと弊害が出てくる瞬間もあったので、いろいろな脳みそを使う必要がありました。室岡はサイコパスな一面を持っていてぶっ飛んだ男ではありますが、ぶっ飛び方にもいろいろあると思うんです。兼高という相棒がいたうえで、どのチョイスのぶっ飛ばし方が最も邪魔をせずに異質に見えるのかは考えながら演じていました。