新海誠新作ヒロイン・原菜乃華の素顔「ネガティブな性格は短所で長所」
――近年は視聴者の間で“考察”が白熱した『真犯人フラグ』、ヤンキー女子を演じた『ナンバMG5』、そして本作と、話題作への出演が相次いでいます。環境の変化を実感することはありますか?
原:今年の春に高校を卒業して、社会人1年目になります。「進学はせずにお芝居1本でやっていこう」「これでご飯を食べていこう」と覚悟したことは、自分の中で大きな出来事でした。『ナイト・ドクター』(フジテレビ系)の後に『真犯人フラグ』への出演が決まって、学校に行けない時間が増えたことで、両立することの難しさを感じることもありました。私は要領が良いタイプではないので、器用にどちらもできるかといえばそうではないなと。どちらも中途半端になってしまうとしたら、お芝居に専念したいと思って「進学はしない」と決断しました。
――2017年公開の単独初主演を務めた映画『はらはらなのか。』では、子役から女優へと変化していく心の揺れや、成長していく姿を演じていました。2009年に6歳でデビューした原さんご自身は、子役からキャリアを重ねる中で“迷いの時期”はありましたか。
原:物心ついた頃からこのお仕事をしているんですが、勉強も運動も自信があるほうではなかったですし、周囲から褒めてもらえることはこれしかないような気もしていて(笑)。このお仕事を「辞めなきゃいけないのかな」「難しいな」と思った時期はありますが、「辞めたい」と思ったことはありません。やっぱりお芝居をしているときはとても楽しいですし、好きじゃなかったらここまで続けて来られなかっただろうなと思います。
――「辞めなきゃいけないのかな」と思った時期は、どのような心境だったのでしょうか。
原:以前の事務所で、所属していた部門がなくなってしまい、芸能活動が何もない状態になってしまった時期がありました。そのときに「これまで当たり前にあると思っていたものは、当たり前ではないんだ」「このお仕事ができなくなってしまうかもしれない」ととてもショックを受けて。女優のお仕事が自分にとって、とても大事なものになっているんだと改めて気づきました。実はそれ以降、オーディションでさらに緊張するようになってしまったんです。「これは自分にとって大切なものなんだ」「受からなかったらどうしよう」という気持ちがより強くなったのかもしれません。
――鈴芽は扉をめぐる旅を通して、たくさんの素晴らしい出会いを果たしていきます。原さんにとって、女優業の転機となるような出会いはありますか?
原:映画『罪の声』(2020年)で“望”(のぞみ)という役柄を演じさせていただいて、街中でも「望ちゃん役の子だよね」と声を掛けていただいたり、オーディションなどでも顔と存在を知っていただけるようになったので、私にとってとても大切な作品です。主演を務められていた小栗旬さんは、事務所の先輩でもあるんですが、とても優しくて、私のような若い者にもものすごく良くしてくださる方なんです。周囲の皆さんから慕われている小栗さんを見ていると、私もいつか後輩ができたときなどに、きちんと“与えられる人”になりたいなと思います。そのためにも今はチャレンジの時期! 自分の好きなこと、できることを、たくさん見つけていきたいです。
(取材・文:成田おり枝 写真:高野広美)
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