『アリスとテレスのまぼろし工場』上田麗奈、“逆が多い”ヒロイン・睦実の複雑な感情は「絵と一緒に作っていく」
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――本作は“変化”がひとつのキーワードとなる物語です。上田さんは声優デビューした時と比べて、お芝居への向き合い方が変化したと感じていますか。
上田:感じています。180度考え方が変わったこともありました。ただ、変わったことで「それが正解なのかも」と思って突き進んでいると、「あれ、やっぱり正解じゃなかったかも」と覆されることもあって。今はその連続って感じです。そして、そのたびに成長しているんじゃないかなと思います。
――何が正解なのかは分からないし、正解はひとつじゃないかもしれない、ということでしょうか。
上田:例えばアートもそうだと思うのですが、知れば知るほど知識が豊富になり、モノの見方がどんどん増えていくんですよね。お芝居でも「あっ、私はこっちの見方しか知らなかったんだな」と思う瞬間がいっぱいあって。だから、向き合い方の変化という点で言えば、何かに生まれ変わるというよりも、見方が増えていくという感じですかね。何が正解か分からないというのは本当にその通りだと思います。ぜんぶ正解なのかもしれない。見え方や角度は人の数だけあると思うので、この先も衝撃を受けるんだろうなと思います。
上田麗奈
――本作における“変化”も、人によっては正義になるということがあるかもしれませんね。
上田:人って、それぞれ考え方が違うじゃないですか。でもアニメーションって、たくさんの人たちが集まって、考えをひとつにまとめて作品にするんですよね。「それって、難しいよね?」と思うのですが、難しいことを楽しんでやれちゃう人がこの業界には多いんです。悔しい、分からないという気持ちと一緒に、楽しいな、知りたいなというポジティブな気持ちを感じていける限りは、きっと私もこの仕事を続けたいと思うんだろうな。
――最後に、本作の公開を楽しみにしているみなさんへメッセージをお願いします。
上田:正直なところ、このインタビューでも「これで合っているのかな」と考えていたら、本心を上手く言語化できなかったことがあった気がしています。もしかしたら同じようなスッキリしないものを抱えて、本作のキャラクターたちはフィルムのなかで動き回っているのかもしれません。でも、複雑だったり面倒くさかったり、もどかしいという感情を抱えているからこそ、人とつながったときに、爆発力が生まれるのかも。そういう感情の動きや、つながりを本作では楽しんでいただけるはず。そして、「もう一回見よう」と思っていただけるはずです。何度か観てみると自分なりの答えが見つかる作品だと感じていますので、それも込みでまずは一度、劇場で本作を観てみてください。
(取材・文:M.TOKU 写真:高野広美)
映画『アリスとテレスのまぼろし工場』は、9月15日全国公開。