『VIVANT』監督が挑戦した日本ドラマ異例の試み「1話を捨てる」「社員で作る」
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『VIVANT』メイキング写真 (C)TBS
モンゴルで敢行した2ヵ月のロケなど、規格外な世界観で作り上げられた本作。ビッグネームが勢ぞろいしたキャスティングにも驚かされたが、これは『半沢直樹』『陸王』など大ヒット作を手掛けてきた福澤監督だからこそ実現できたようにも思える。しかし、本人の見解は違った。「僕だから出るっていうより、日本ドラマも外に出ていかないといけないという危機感が皆さんにあったんだと思います。1億2千万の人口相手にドラマを作ったら、ある程度ヒットしたらまあまあ儲かるシステムはできているけれども、韓国と違って日本はなかなか内向きで、外に出ていこうとしない。もっと外に、世界に出ていかないといけないという気持ちはみんなあったと思うんですよ。今回この企画をTBSがやります、ちょっと外向けに作っていきます、ということにみなさん賛同してくださった感じがしますね」。
これだけ社会現象化した作品でも「予算オーバーが…」とこぼすが、「TBSのいいところは、大変だけどやってみようかというところ」だとも。本作の制作には、“ドラマのTBS”として、大事な使命もあったそうだ。「ドラマ部としてのノウハウの伝承ですよね。他局はドラマ制作を制作会社に任せることも多いですが、TBSでは基本的に社員で作る。これは会社として赤字になるリスクもあるんです。予算が決まりますよね。もし何か不測の事態で撮影がストップした場合、制作会社に任せていると予算管理がやりやすいんです」とドラマ制作の裏側を赤裸々に告白する。
「でも、外に振れば予算は管理できるけど、ノウハウはストップする。石井ふく子さんや久世光彦さんが作ってきた伝統あるドラマの作り方、伝承されてきたものをストップさせないように、これまで社員で作ってきたっていうのが今になって生きてきたっていうかな。大型ドラマを社員でポンと作れるという、そういうものを大切にしなきゃいけないっていう心意気があったから、今回のドラマができました」。
『VIVANT』福澤克雄監督 (C)TBS
また、『VIVANT』では新しい試みにもチャレンジしたそう。「思い切って、1話を捨てたんです」。監督によると「日本のテレビドラマの作り方っていかに1話を面白くするかという1話勝負。1冊の本があったら1/3くらい使っちゃうわけ、話が動くから」とのこと。「“さぁどうだ、面白いでしょう。ここまでやりました!”って最大限のパワーで臨んでくるんだけど、傍から見てると、気合い入れすぎちゃって…。今の時代、作り手よりお客さんが数倍上をいってると思うんですよ。気合いを入れた1話を見ると、視聴者は『はいはい、最後こうなってこうなってこうなるのね』って大体予想がつく。そんな作り方をしちゃう」と解説。
「それが大失敗。海外はなんだかよくわからないけど面白そう、なんのドラマなんだかわからないように作ってる」といい、「『VIVANT』は回を重ねるうちに物語が動いていく作り方をしようと思って。1話で乃木が別班だってわかるようにやったほうがいいかなとも思ったんだけど、これがわかったらなんか面白くねえなって」と考えを変えた。「4話で結構ドラマが変わる。ほかのドラマって4話でガクって物語が落ちるところを、ガクって変わる作り方をしたんです。びびりながら挑戦しました」。