デビュー15周年の岡山天音、手探りで始まった俳優人生「カオスの中でもがいていました」
ツチヤから伝わって来る焦燥感についても、特に駆け出しの頃の自分に重なったと話す。「カオスの中でもがいていました。今はオンオフもしっかりしてますけど、当時はオンとオフが何のことかも分からないし、“役になり切ることが正義”みたいな情報だけが入ってきたりして。芝居に対するアプローチやルーティーンといったものがない中で、先入観に踊らされていました」と苦しみを振り返る。
「テレビで俳優さんが、そういう“正義”を語るインタビューなんかを見て、強迫観念に駆られたりして。行かなきゃいけない場所は、たぶんあそこなんだよなというのは何となく分かるんです。でも今自分がいる場所から、どう行けばいいのか分からない。“みんなどうやってるんだ。カメラの前にあんな平然と立って”と思っていました。でもそんな風に思っている間も仕事は続いていくし、人生は続いていく」。
いま、実力も人気も伴い、一線で活躍している岡山に、おぼれるようにもがいている時期があったとは驚きだ。そこからどうやって、“今の岡山天音”にたどり着いたのかを尋ねると「作品や人との出会いの蓄積でしかないです」という答えが返ってきた。目の前の岡山は、15年積み上げてきた証なのだ。それを知ると、かつてもがきの中にいた岡山の姿も、また改めて振り返りたくなる。
2024年は30歳となる。「俳優を始めて15年も経つなんて不思議ですよね。当時の自分が15歳くらい。そこまでの人生と俳優のキャリアが同じ分量になるわけです。そして、これからは俳優としての人生のほうが長くなっていくわけですから」。
その時間を、私たちも一緒に作品という形で見つめていけるのかと思うと、楽しみでしかたない。「これからまた、いろんなものと、いろんな場所をくぐり抜けて、未開の地に行けるんじゃないかなって思っているんです。進化していく自分をイメージしているから。どうなっているかは分からないけど、“まあ、大丈夫だろう”って」と顔をほころばせた岡山。カオスの中でもがいていた少年は、自らの足で立つ俳優となり、未来をたくましく見つめている。(取材・文:望月ふみ/写真:松林満美)
映画『笑いのカイブツ』は1月5日より全国公開。