クランクイン!

  • クラインイン!トレンド

『猿の惑星』監督、“良い悪役の極意”を語る 「ただ“悪”を追求するだけでは面白くない」

映画

ウェス・ボール
ウェス・ボール クランクイン!

 1968年に第1作目が公開され、長く愛されてきた映画『猿の惑星』シリーズ。その歴史は『スター・ウォーズ』や『エイリアン』よりも長く、時代ごとに新しいファンを生み出してきた。そんなシリーズに新たな始まりを告げる完全新作『猿の惑星/キングダム』が現在公開中。企画が立ち上がった理由から、本作の魅力的な悪役であるプロキシマス・シーザー(ケヴィン・デュランド)への思い、撮影やVFXの裏側まで、来日したウェス・ボール監督に話を聞いた。

【写真】人間を徹底的に排除する冷酷な独裁者プロキシマス・シーザー

■猿を描いているが「人間の物語」

 本作の舞台は現在から300年後の世界。そこでは猿が圧倒的な進化を遂げる一方で、かつてこの惑星の支配者だった人間は退化し、動物のように猿たちから隠れて暮らしていた。そんな中、この惑星の命運を大きく変える可能性を持つ人間が出現する。彼女の名前はノヴァ(フレイヤ・アーラン)。彼女と出会った猿のノア(オーウェン・ティーグ)は、ノヴァと共に、巨大な帝国を築くことをもくろむ独裁者プロキシマス・シーザーに立ち向かう。

ーー2019年に本作の制作が発表されましたが、監督の元へオファーがいったのがいつ頃で、どのくらいまで企画が固まっていたのでしょうか?

ボール:5年前くらいで、何もない段階から始めました。スタジオから「『猿の惑星』の次の監督をするとしたらどうする?」とだけ聞かれたので、最初はちゅうちょしてしまったんです。語るべきストーリーがまだあるのか分からなかったし、『猿の惑星:創世記』から始まる3部作のパート4を作ることには興味がなかった。作る理由がなければ嫌でした。それから、このストーリーが生まれてからは、作品が自立していて存在するべき理由もあったので、みんなで前を向いて取り組んでいきました。

ーー企画が立ち上がってから撮影に入るまでの間は、コロナ禍でした。作品に影響は出ましたか?

ボール:脚本を書き始めたのがコロナの前でした。なのでウイルスが世界を変えてしまうという脚本を書いているのはすごい感覚でしたね。

ーーコロナ禍だったからこそ、ブラッシュアップなど、作品とじっくり向き合う期間ができたということはありましたか?

ボール:ブラッシュアップどころか、当時はまずこれからどういうストーリーにしていこうかと話している段階だったんです。僕からするとクレイジーなアイデアもある中で、それを脚本家のジョシュ・フリードマンがうまく1つの物語としてまとめてくれた。でもそれがすごく長尺で、その後に圧縮する作業に入りました。最終段階では予算が足りなくて泣く泣くカットしたシーンもあって。「作ると60億円くらいかかるよ」と言われたんです。あれができると最高だったんだけどなぁ。でもそのあたりは通常の映画製作と同じでしたね。

ーー見てみたかったです! 個人的には悪役のプロキシマス・シーザーが好きで。完全な悪ではなく、どこか納得してしまう思想を持っていました。

ボール:『猿の惑星』は猿を描いてはいるけれど、人間の物語です。人間というのは矛盾だらけでグレーな部分がたくさんあり、僕はそこに興味がありました。また、そういった点が多いと、キャラクターとしても面白くなります。プロキシマスの場合、彼の発言に「一理ある」と思う人も多いのではないでしょうか。最後の方になると彼は良くないことをするから、結局ノアを応援してしまうんだけど…(笑)。魅力的なキャラクターになったのは、演じてくれたケヴィンのおかげもあります。本当に楽しみながら向き合ってくれました。

プロキシマス・シーザー (C)2024 20th Century Studios. All Rights Reserved.
ーーその一方で、プロキシマス・シーザーが支持するシーザーの存在を、あまり本作では描いていませんでしたね。

ボール:『猿の惑星:創世記』から始まる3部作を見ている人は、シーザー(アンディ・サーキス)の存在を知っているから、それが残っているといいなと思っています。また本シリーズは神話であり世界観が大きいので、全部入れられなかったというのもあります。本作は意識的にノアの視点から描いているんです。なので観客は、ノア経由で、ラカ(ピーター・メイコン)やプロキシマス・シーザーから聞いた話としてシーザーを知ることになります。

ーー少し話が逸れるのですが、監督は『僕のヒーローアカデミア』がお好きでそうで。『ヒロアカ』も敵(ヴィラン)が魅力的で、傑作には魅力的な悪役が多く存在します。監督が思う「良い悪役」とはなんでしょうか?

ボール:良い質問ですね。なんだろう。クールで皮肉で興味深い部分があって、共感できる何かを持っている。ただ“悪”を追求するだけでは面白くないですよね。やっぱり何かを達成しようというゴールも必要だと思っています。

ーーありがとうございます。ここからは撮影の話を。本作は、ほとんどがロケかセットを作成しての撮影だったとか。バーチャルプロダクションという選択肢もあったと思いますが、リアルにこだわった理由はなんでしょうか?

次ページ

■『猿の惑星/キングダム』に込めた思い

1ページ(全2ページ中)

この記事の写真を見る

関連記事

あわせて読みたい


最新ニュース

  • [ADVERTISEMENT]

    Hulu | Disney+ セットプラン
  • [ADVERTISEMENT]

トップへ戻る