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石原さとみ、産後復帰作で“追い詰められる母”を熱演 「怖いくらいに苦しみが想像できる」

映画

■『ミッシング』は名刺代わりになる作品に

石原:ほぼ全シーンがそうでした。今回の作品で初めて感じたことなのですが、「よーい、スタート」に合わせて演技をすると途端にうそになってしまうんです。意識してしまうし、緊張してしまいますから。そこでテストを終えて本番に行くまでの間、何かをいじる芝居があるとしたらずっとその行為を続けていました。青木さんもそれに付き合ってくださって、前段階から一緒にやってくれたのがとても助けられました。

クランクインした直後に撮ったシーンで、娘の持ち物を砂田(中村倫也)の前に色々と持ってきて「なんでもします」と言うシーンがありますが、その撮影前もずっと動いていました。助監督さんがどこでスタートをかければいいのか分からなかったようなのですが、最初の1回で皆さんが「こういうタイプなんだ」と感じてくださって、そのシーン以降はどこでスタートをかけてもいいよ、という形に切り替えてくださいました。

警察署から電話を受けて駆け付けるシーンも、青木さんや皆さんが過呼吸を起こすまで付き合ってくださって、その後にフラフラな状態で一緒に階段を上がってくださいました。車から出るシーンも、青木さんがずっと手をつないでいてくださって、そうしたやり方はとても大きな学びになりました。

――先ほどお話しいただいた「役を生きる」ですね。

石原:勝手に始めているから、スタートも何もどこを切り取られても構わないんですよね。そこに生きているわけですから、カットをかけられるまで延々と続けられるのが“普通”だと思いますし。

撮影中は試行錯誤の連続でしたが、とことん寄り添ってくれる優しい方々ばかりの現場で、本当にありがたかったです。だからこそ、本作を経て得られた宝物のような感覚をどうやったら忘れられないようにできるのか、いまはまた焦ってしまっています。

――「無意識の演技」を他の作品に転用できるかといえば、必ずしもそうとは言えないでしょうし…。

石原:そうなんです。「吉田監督の作品だから、吉田組だから」な気もしていて、違うところに行ったらまた元に戻ってしまうんじゃないかと怖さを感じています。そういった意味では、先ほどお話しした『アンナチュラル』後の感覚に似ているのかもしれません。野木さんからいただいた愛を感じて、それを求めて吉田監督にお会いして、また経験や得難い時間をいただいて――きっとまた“次”を求めるのでしょうが、得られる確証は全くないし、得られたとしても何年かかるかは分かりません。それでも、求めることをやめられないのだろうな、とも感じます。

――撮影が終わってから僕たちが作品を見られるまでにはどうしてもタイムラグが生まれてしまうものですから、鮮度を保ったまますぐ次の作品に臨めないとなると焦りますよね…。

石原:すごく焦ります。でも育児もしっかり仕事と両立してやりたい気持ちはあります。とはいえ、ボロボロになる覚悟がいるくらいの作品じゃないと意味がないので、難しいです。


――ただ、先ほどお話しされていた「飽きる」とは全く違うフェーズなのではないでしょうか。さらなる進化に向かっている際の成長痛といいますか、ポジティブな苦悩な気がします。

石原:確かにそうですね。今感じているのは自分への期待も込めての焦りだから、前進はできているんですよね、きっと。

――間違いなくそうかと。5月17日に公開されたら、きっとすさまじい反響があるかと思います。

石原:ありがとうございます。私自身、すごく期待しています。見ていただいた上で「一緒に仕事がしたいです」と言ってもらえるような、自分の名刺代わりになる作品ができたことは本当にうれしいです。

※吉田恵輔の「吉」は「つちよし」が正式表記

(取材・文:SYO 写真:上野留加)

 映画『ミッシング』は公開中。

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