音楽家キャットが出会ったのは、100年前の伝説の冒険家?! 『アーネストに恋して』主演ヴァレリー・ヴィゴーダインタビュー
――キャットの人物造型にはどの程度あなた自身が投影されていますか? キャットはヴァレリーさん自身でしょうか?
ヴァレリー:ある程度はそうです。(脚本家の)ジョーには執筆にあたり、私の個人的な話もたくさんしたので、かなり私に近いです。ただ、キャットは最先端な女性でアクティブで、体のあちこちにタトゥーを入れたりしていますが、私は全くないです(笑)。そういう違いはありますが、内面的なところではだいぶ私のパーソナリティに近いでしょう。
これはたまたまなのですが、本作を作り始めた2009年当時、私はシングルマザーではなかったのですが、2017年にオフ・ブロードウェイで上演するころには、キャットと同じシングルマザーになっていました。自分もその立場を経験することで役への共感が深まり、よりキャットに近づくことができたと感じています。
松竹ブロードウェイシネマ『アーネストに恋して』場面写真(C)Jeff Carpenter(C)BroadwayHD/松竹
もう1つお話したいのが、私の音楽への影響です。作曲の過程でキャットが行っているライヴ・イベント・ミュージック(聴衆の前で即興的に演奏する音楽)を学んだことで、私は現在、ループを使った音楽(短いフレーズを重ねたり繰り返しながら演奏する音楽)のアーティストとしても活動しています。この役が私をアーティストとしても成長させてくれたと思っています。
――作曲にあたってはどのようなコンセプトをお持ちでしたか?
ヴァレリー:キャットはブルックリン在住のルーピング・アーティストでゲーム音楽の作曲家なので、冒頭のナンバーのようにエッジーで都会的、アヴァンギャルドな音楽を作っていたのが、シャクルトンの登場によって、徐々に彼の音楽性と融合して行く……という過程を表現したいと思いました。
バンジョーの音色や、当時の流行曲(「It’s a long way to Tipperary」)のような旋律を取り入れて行くことで、よりシネマティックに、趣のある音楽に変わって行く彼女の音楽を通して、キャットとシャクルトンの世界の一体化を感じていただけたらと思います。
――シャクルトン含め、いくつもの男性キャラクターを巧みに演じ分けているウェイド・マカラムさんとの共演はいかがでしたか?
ヴァレリー:大好きな俳優さんです。彼は俳優としても歌手、パフォーマーとしても才能豊かだし、人としてもすばらしい、太陽の光のような人です。
松竹ブロードウェイシネマ『アーネストに恋して』場面写真 作品クレジット(C)BroadwayHD/松竹
彼とは以前、1度仕事をしたことがあって、2006年にディズニーのクルーズのために1時間に短縮した『トイ・ストーリー』のショーを書いたのですが、その最初のリーディングに、ウッディ役で参加していたのがウェイド。その時の印象が強くて、シャクルトンを演じられるのは彼しかいない! と思い、お声がけしました。
彼はすごくスター性があるし、キャラクターの演じ分けもスイッチのように素早く正確に出来るし、とても面白い人。のみならず、体力的にも驚異的な人で、冒険中に登っている動きをする時、懸垂をめちゃくちゃゆっくりやって見せるんです。滑らかに、ゆ~っくり(笑)。客席のお客様たちも毎回、息をのんで観ていました。