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佐倉綾音の表現論—正義を貫く“変わらない自分”の在り方

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■変わらない自分を保つための変化

――家族と日常を守るために戦う坂本のように、佐倉さんがお仕事や生活において「これだけは守りたい」と思うものや信念はありますか?

佐倉:昔はお仕事において曲げたくないことが結構あったんです。でも、年齢やキャリアを重ねるうちに、必要だと思って守り抜いてきたことが、「今の自分にはもう必要ないな」と感じる部分も増えてきて。それは、「守ってきたからこそ、今の私なら手放せるもの」でもあるんですよね。

そういった変化の中で「変わっちゃったね」と思われるのは少し怖い部分もありますが、「変わらないために変化する」という意識を持つことを最近は考えるようになりました。

――ご自身の中で「許せる範囲」が広がってきたというか。近年では、マネージャーさんが運営する公式インスタグラムも開設されましたが、そうした部分でも心境の変化があったのかなと。

佐倉:以前は「時代に適応できない」というのが、自分の強みでもあり弱みでもあると感じていたんです。SNSが流行り始めた頃も、自分では全然取り組む気になれなかったですし、いわゆる「声優が歌って踊る活動」にも、なかなか適応できなくて。そのせいで「やりなさい」と怒られることもたくさんあったのですが、自分の中でどうしてもそのスタンスを変えられなくて。

ただ、そうして変わらなかった結果、「あの頃からそうだったよね」と言われることが多くて、逆に「売れて変わったね」「大人になって変わったね」と言われることがほとんどないんです。それは以前の自分の頑固さに感謝する部分でもありますし、自分のスタイルを大切に守ってこられたことは、今でも良かったと思っています。

でも、やっぱりどこかで時代は変わっていくもので、変わらないことにこだわりすぎると、今度は「時代に取り残された変わった人だな」と思われることもあるかもしれない。そういう悪目立ちはしたくないんです。

だから、時代を追いかけるというよりは、少し後ろをついていくぐらいの距離感で、時代と一緒には生きていきたいなと。新しいこともすべてが悪いわけではないですし、むしろ良い変化もたくさんあると思うので、変わらない自分を保つために、必要な変化は意識して取り入れていくようにしています。その辺りは、自分の中で大事にしている感覚ですね。


――そうした時代との向き合い方に関しては、以前のインタビューでも「理解はせども、共感はせず」という生き方をしたいと仰っていましたよね。そんな「変わらない自分」でいたことでほかに良かったと感じたことはありますか?

佐倉:3歳くらいからずっと知っている幼馴染に「変わらないね」と言われたことがあって、それがすごく嬉しかったんです。幼少期の自分って、ある意味すごく本質的な純度が高いというか、本当にありのままの自分だったと思うんですよね。

そこからいろんな経験をして、良くも悪くも「不純物」みたいなものが積み重なって、今の自分の考え方や価値観が形作られていると思うんですけど、幼少期の純度の高い自分も「間違っていなかった」という証拠のような気がして。それに、そうした純度の高さを今もある程度残しつつ生きられているのかなと感じることができたのが嬉しかったですね。

あまり「変わったね」と言われることがないのは、良いことなのか悪いことなのかはわからないですけど、私にとっては一つ大事な言葉として心に残っています。

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■「自分のための表現」と「誰かのための表現」

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