『おむすび』でコロナ禍を描く理由 「このドラマで描くべきものは何か」――答えが見えた気がした【宇佐川隆史統括インタビュー】
(C)NHK
――そうした医療従事者の努力がある一方で、医療従事者の家族が周りから当時どのように見られていたのかというエピソードも今後描かれます。
宇佐川統括:実際に、同じような出来事があったと聞いています。ただ、当時は発言をされた人にも悪意があったというよりも、不安や恐怖を抱えていた中で、口にしてしまったこともあると思うんです。
だからこそ、このエピソードを描くことで、「もし同じことが再び起きたらどう行動すればいいのか?」を考えるきっかけになればと思いました。それは、震災を伝えることとも通じています。過去の出来事を描くだけでなく、それが次に繋(つな)がってほしい。子どもたちにどう伝えるか、私たちはどう行動するべきか、そんな問いかけをする作品にしたいと考えました。
――ちょうど東日本大震災が起きた3.11のタイミングで、コロナ禍を描くことになりましたが、狙いがあったのでしょうか?
宇佐川統括:3.11に何を描くかは、多くの方が気にするポイントだと思います。しかし、私たちはより大きな視点で捉えました。つまり、「私たちは未曾有の危機に直面したとき、どう向き合い、どう乗り越えていくのか?」というテーマです。だからこそ、この時期にコロナ禍の話をすることも意味があると。震災にもコロナ禍にも共通する課題だと思いました。
また、人間には本来「レジリエンス(困難を乗り越える力)」が備わっていて、その生命力やたくましさを伝えることも、この作品の重要なテーマの一つです。3.11という時期に、多くの人が災害や危機について考えるからこそ、同じようにコロナについても向き合える機会になるのではないか。そう考えて、このタイミングで発信することにしました。
(取材・文:川辺想子)
連続テレビ小説『おむすび』はNHK総合にて毎週月曜〜土曜8時ほか放送。