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『おむすび』でコロナ禍を描く理由 「このドラマで描くべきものは何か」――答えが見えた気がした【宇佐川隆史統括インタビュー】

ドラマ

連続テレビ小説『おむすび』第23週より
連続テレビ小説『おむすび』第23週より(C)NHK

 平成から令和へ、一気に物語を駆け抜けてきた連続テレビ小説『おむすび』。ドラマが終盤を迎える中、今週は、2020年に発生したコロナ禍をテーマに取り上げている。世の中全体に不安な空気が流れる中、管理栄養士の結(橋本環奈)が働く病院でも、ついにコロナ患者の受け入れが始まる。近代を描いた朝ドラ『おかえりモネ』や『カムカムエブリバディ』でもコロナ禍を思わせる描写は登場したものの、病院を舞台に真正面から描くのは初めてのこと。制作統括の宇佐川隆史氏に、このテーマを選んだ理由を聞いた。

【写真】物語は2020年のコロナ禍に マスク姿で働く結(橋本環奈)たち

■「このドラマで描くべきものは何か」という問いに対する答えが見えた気がした

――コロナ禍をテーマに、病院を舞台に描くことは最初から決めていたのでしょうか?

宇佐川統括:そうですね。もともと管理栄養士さんを題材にしたドラマを作ろうと考えた時に、関係者の方々にお話を伺いました。その中で、コロナ禍における大変さはドラマとしても一つの注力すべきポイントだろうと感じました。医療従事者や関係者の方々が当時どんな思いを抱えていたのか、どんな困難があったのかは、これまでドキュメンタリーなどでも伝えられていますが、子どもから大人までが一緒に語れる枠、それこそ朝ドラなどではそこまで詳しく語られてこなかった。一般の方々にとっても、あの時期は「死」が身近にあるかもしれないという不安や恐怖を感じた期間だったと思います。だからこそ、その舞台裏を描くことには大きな関心を持ってもらえるのではないかと考えました。

また、医師や看護師の姿はよく取り上げられていますが、病院の食事がどのように提供されていたのか、管理栄養士の方がどんな工夫を行っていたのかは、あまり知られていません。そこに焦点を当てることで、改めてあの時に何が起こっていたのかを伝えられるのではないかと。最初から、その視点でのドラマ制作を目指していました。

――実際に管理栄養士の方に取材をする中で、印象に残っているエピソードはありますか?

宇佐川統括:コロナ禍では、管理栄養士さんが患者さんと直接関わる機会が大幅に制限されてしまいました。それでも、「何もしない」という選択はせず、間接的にでも患者さんとコミュニケーションを取る方法を模索されたそうです。「食事をただ提供するのではない。食を通じて心が通い合うことが大切なんだ」と強く実感されたそうです。当たり前のように思えることですが、改めてその重要性を再認識されたのだと。

手紙を通じて感謝の気持ちを伝えたり、どういう意図でこの食事を提供しているのかを伝えたりすることで、心のつながりを作っていく。その話を聞いたときに、「このドラマで描くべきものは何か」という問いに対する答えが見えた気がしましたし、取材しながら、純粋に感動しました。

――まさに『おむすび』のテーマに通じますね。

宇佐川統括:そうなんです。実際にはもっと多くのエピソードがあったのですが、すべてを盛り込むことは難しくて…。今回は、コロナ禍の中でも序盤の“一番大変な時期のお話”にしぼりました。

医療従事者や関係者の方々は、本当にさまざまな工夫をされていました。取材をしていても、こんな苦労があったのかと。例えば、この時期の患者さんは、コロナにかかっていない人でも、会話する機会が減ったことで、残食率(食べ残す割合)が上がったという話も印象的でした。10〜20%も食べ残しが増えたそうです。つまり、一人当たり1〜2割の食事を食べなくなった。その話を聞いたとき、「食」は当たり前のものではないことを改めて考えさせられました。ただ食べるだけでなく、その背景にある思いや関わる人々の存在が、やはり重要なのだと強く感じました。

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■描くからには、次に繋がってほしい

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