早見沙織が語る『雨と君と』のやさしい世界――癒しと気づきがそっと降り注ぐ日常
――早見さんは雨の日はお好きですか?
早見:外で仕事がある日か、家の中で雨を感じられる日かによって、自分の気持ちも変わるなと思います。たとえば移動中に突然大雨が降ってきたりすると、「うわ〜」となってしまうこともあります。そしてそういう日に限って、傘を忘れていたりして……(笑)。
ですが、そんな「うわ〜」な日こそ、どうやって雨を楽しむかを考えるのが、学生時代から好きで。「雨の日に聴きたい曲」を集めた自分だけのプレイリストをつくってみたり。逆に、おうちにいるときは、あえて音楽を流さずに、窓の外の雨音に耳を澄ませてみたり。
そうやって、雨の日にしか味わえない時間を楽しめるようにしたいと、いつも思っています。
雨に対してなるべく“プラスの感情”で向き合えるような日々を過ごしたいですね。
――素敵ですね。ちなみに、雨の日にまつわる特別な思い出はありますか?
早見:以前、友人たちと浅草に出かけたことがあって。お参りをしたり、食べ歩きをしたりして、すごく楽しい時間を過ごしていたんです。ですが、その途中で突然、スコールレベル100のような大雨が降ってきて(笑)。傘なんてほとんど役に立たず「これはもうどうにもならない!」となり……。近くの商店街に雨宿りに駆け込みました。
その商店街には少し天井のある場所があり、そこに周囲の人たちも集まってきて、みんなで雨をしのいでいたのですが、そのとき、急にその屋根が“変形”したんです。最初はところどころ隙間が空いていた天井が、ギューッと動き出して、どんどん隙間を覆っていくんですよ。おそらく、大雨のときだけに作動する仕組みだったんでしょうね。「ここって、こんなふうになるんだ……!」と、まるで秘密を見せてもらったような気持ちになりました。
まわりの人たちも「おお〜!」と驚いていて、みんなスマホで動画を撮り始めたり(笑)。その日しか見られなかった珍しい瞬間を共有できたのが、すごく印象に残っています。あの雨の中で見た“ちょっとした奇跡”のような体験が、今でも楽しい思い出です。
――なんだか、とても『雨と君と』らしい、あたたかい思い出ですね。また、君のような動物との思い出や関わりで印象に残っていることはありますか?
早見:私は長くウサギを飼っていたんです。あの、もう“ほわほわの癒し”というか……家にふわふわした存在がいるのは、本当に大きいですよね。
動物は、言葉で会話ができるわけではないですが、それでも“わかり合える瞬間”がある。『雨と君と』で描かれる、藤と君との関係にもすごく重なると思っていて。気づけば心がふっと癒されていて、「ありがとう」と自然に思える。そんな存在でした。
――最後に、放送を楽しみにされているみなさんへメッセージをお願いします。
早見:7月より放送が始まる『雨と君と』の物語。アニメ中では、移ろいゆく季節の美しさや何気ない日常の尊さが、とても丁寧に描かれています。
雨音のように静かに、でも確かに心に染みてくるような作品です。この物語が、みなさんの暮らしの中にふっと溶け込んで、気がつけばそっと寄り添っている。そんな存在になれたら、とても嬉しく思います。7月からの放送、どうぞ楽しみにしていてください。
(取材・文・写真:吉野庫之介)
テレビアニメ『雨と君と』は、7月5日より毎週土曜25時30分からテレビ朝日系全国24局ネット“NUMAnimation”枠、BS朝日にて放送。