ミセス大森元貴、『あんぱん』“嵩”北村匠海とは「ネガティブな気持ちの出どころが似てる」
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連続テレビ小説『あんぱん』場面写真 (C)NHK
――モデルとなったいずみたくさんに共感するところはありますか?
大森:シンパシーなんて畏れ多いです。でも「音楽というのは人の心を彩るものであって、1つの娯楽にすぎないんだけど、されど…」っていうところに魂を懸けているというか、いろんな思いを注ぎ込んでいるということは、自伝を読ませていただいたり作品を拝聴させていただいたりしても感じます。純粋に人を明るくさせようとしているところは、そうだよな、そうあるべきだよなと思いますし、おこがましいんですけど、僕もそうありたいなと思っています。
“日常に当たり前に存在している大衆エンタメ”みたいなところを、ミセスとしても大切にしているので、“人を明るくしたい”という気持ちの根幹には通ずる部分があるのかなと思います。
――ピアノを演奏されるシーンはいかがでしたか?
大森:撮影初日だったんですよ。僕は楽譜を読めないですし、ピアノで曲を作ることもあるんですけどピアノ弾きではないので、やばいとなって1週間くらい、CM撮影、レコーディングとあらゆる現場にピアノを用意していただき、ちょっとでもピアノに触れようと詰め込んでいきました。キーボードの藤澤(涼架)にも教わりました。「これ1週間じゃ無理だよ」って(笑)。うちの制作のディレクターも見てくれてなんとか演じましたが、どう映るのかすごく不安です。
でも資料を拝見するかぎり、いずみたくさんもピアノは独学だったとのことなので、「これはちょっといけるぞ。史実通りだろう!」という顔で弾いています(笑)。
――歌声を披露されるシーンもあるとか。
大森:中園ミホさんから脚本を頂いて、“歌う”と書いてあったので、「やったな、中園さん!」と(笑)。面白いし意味は分かるんですけど、僕が歌うということがフックになってしまうと作品を邪魔するなと思ったので、そこは繊細に描きたいと皆さんと相談しました。
たくやはプレイヤーではないというのが大前提としてあるので、歌に対してレスポンスが早いと嘘だろうなって思うんです。普通歌う時って少しのためらいがあると思うので、そういうニュアンスを大切にしたいなと。たくやとして歌う時はなるべくキーを抑えてミセスが香らないようにしましたね。そういう意味ではミセスをけずる作業を意識したかもしれません。
――収録現場にいずみたくさんのご親族が来られて、何シーンかご覧になられて涙されていたと伺いました。
大森:撮影後にご挨拶させていただいたのですが、いせたくやのあり方を認めていただいたようで感無量でした。
――音楽活動、演技のお仕事と多忙な日々だと思いますが、そのお忙しい中でもチャレンジし続ける原動力はどこから来るものでしょうか?
大森:僕も自分に自信がないので、せっかく生きているなら楽しいほうがいい、そういう気持ちで生きているんです。新たなことに挑戦させていただける機会やきっかけを頂いたならば、精いっぱいの愛情でお返ししたいと率直に思っていて。確かにスケジュールとしては可視化すると忙しいんですけど、心は忙しくなくて、1つ1つとしては充実しているんです。でもどこか満たされないというか自分の信念とずっと向き合っているところもあって、そういうところが嵩にシンパシーを抱くところですね。
だから楽しいですね、いろんな現場があって。でもやっぱりその中でも『あんぱん』はちょっと特別。カフェでの撮影が多いのですが、日常でカフェとか行けないので楽しくやっています。非日常を生きるということが仕事になっているので、圧倒的な日常を描くという朝ドラの現場はリラックスできるし、癒やされる。そういう1つ1つがモチベーションになっていると思います。
(取材・文:佐藤鷹飛)
連続テレビ小説『あんぱん』は、NHK総合にて毎週月曜~土曜8時放送。