坂東龍汰、目指すは“また一緒に仕事したい”と思われる俳優 「現場でみんなが気持ちよく働けるように、と常に考えてる」
坂東龍汰
吹替えを終え、坂東が特に心を掴まれたと語るのが、ヒックが初めてトゥースに乗って空を飛ぶ「ドラゴンライド」のシーンだ。
「あそこの音楽と、IMAXカメラで撮った素晴らしい映像と疾走感は感動しました。実はあのシーン、一連の流れを一発OKがもらえたんです。その高揚感もあって、録った後にみんなで映像を観たら、もう『ふぉー!』『いぇーい!』って大盛り上がりで(笑)。すごく難しいシーンだったのに、一番しっくりきて、手応えを感じました」。
この経験を通して、彼は声の仕事の奥深さと面白さに、改めて魅了されたという。
「声って本当に深い。トーンが少し変わるだけで、映像は同じなのに、キャラクターの見え方が全く違ってくる。やりがいがありますし、自分の声で遊ぶのが好きなんだなと再認識しました。また機会があれば、ぜひ挑戦したいです。次は3歳児とか、小鳥Aとか(笑)。トゥースもやってみたいですね。1人2役で」。
物語のもう1つの軸である、父親との関係。ヒックは、偉大な父に認めてもらえない葛藤を抱えている。坂東自身にとって、父親はどのような存在なのだろうか。
「僕の父は、なんて言うか……『親友』ですね。もう父親っていうカテゴリーじゃない感じがします。でも、昔より今のほうが、いろんなことを話せて楽しいです。ただ、上京する前には『お前は器用貧乏だから、1回壁にぶち当たれ。役者なんてなおさら無理だから。どうせ泣きながら帰ってくる』って言われて。その言葉は僕の燃料と言うか、俳優を続けていく原動力になりました。『絶対負けるもんか』って(笑)」。
そんな坂東は「まず、映像美とスケール感が本当に素晴らしい。ため息が出るくらい圧倒されます。これは絶対に映画館で観るべき作品です。そして、ヒックの成長や、父との関係性の変化、ドラゴンとの圧巻のシーンはもちろん、アニメ版から引き継がれているジョン・パウエルさんの音楽も最高です。アニメに忠実な部分も多いので、昔からのファンの方はもちろん、初めて観る方も、絶対に楽しめると思います。日本の皆さん、ぜひ劇場でこの感動を体験してください!」と作品の魅力を熱弁。
初めての挑戦で感じたもどかしさ、そして、それを乗り越えた先に見えた確かな手応え。坂東龍汰という俳優の「声」は、ヒックというキャラクターの成長とリンクする。フィクションでありノンフィクションのような生々しさも感じられ、より一層作品が自分事のように感じられる。(取材・文:磯部正和 写真:高野広美)
映画『ヒックとドラゴン』は、全国公開中。
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