倍賞千恵子&木村拓哉、久しぶりの山田組参戦で改めて感じた映画の魅力
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倍賞千恵子
――山田監督との作品作りはいかがでしたか?
倍賞:一番言われたのは“挑戦的”っていう言葉でした。衣装合わせの時から挑戦的な衣装とか、挑戦的なメイクとか…。ふと考えてみたら、山田さんの作品では牛小屋で何かやってるとか、普通の主婦さくらさんのような役が多かったので、映画の中でマニキュアをするってこと自体が挑戦でした。いつも挑戦的、挑戦的と思いながらやってましたけど、木村さんと一緒にお芝居をしているうちにいつの間にか忘れていましたね。
車の中で2人でお芝居をしていて、山田さんは遠くにいるのね。最初は演出が聞こえなかったりしたのですがインカムをつけてくださって。でもそれがまどろっこしくなってくると、暗闇の中みんなに「危ない、危ない」と言われながらも私たちのところまで来て、窓越しに演出してくださいました。
木村:監督が来たなっていうのはサイドミラー、バックミラーで見えるんです。こっちに来たなってわかるので、すみれさんが乗っている側の窓を俺が勝手に開けて、ディレクションが始まる。今終わったなっていうのがわかると勝手に閉めるというのをよくやっていました(笑)。
――木村さんは、『武士の一分』以来、19年ぶりの山田組参加となりました。木村さんのまた新しい顔を見たいという監督の言葉もありましたが、そういう役を山田監督から託されたというのは、どのようなお気持ちだったでしょうか。
木村:託されたという言い方がベストなのかどうかわからないですけど、宇佐美浩二に自分を必要としてくれたこと自体で、自分はその現場に赴く理由が十分成り立つというか。どんな役で、どんな衣装で、どういうストーリーであれ、監督がもう1本撮る、そこに呼んでいただけるのだったら、ここで座っている意味はないと。
映画『TOKYOタクシー』場面写真 (C)2025映画「TOKYOタクシー」製作委員会
――撮影中の山田監督の様子で印象的だったことはありますか?
木村:周りの情景に合わせて照明部のみなさんが太陽の光の当て方を調整してくださるのですが、みなさんがその練習をしてくれている間は、僕らは車内でスタンバイの状態だったので、浩二でもすみれでもない木村と倍賞さんで話をしていたんです。「今の作品が終わったらどんな感じなの?」「あ、俺、これが終わったら警察学校の教官になる予定です」と、本当に普通な話をしていたら、山田監督がそれを見ていて「それだよ! 今のいいね!」っておっしゃって(笑)。「今のいいね!」って言われても全然素だったんですけど。
倍賞さんだったり自分だったりのそういう瞬間に監督のアンテナの感度は5Gはいっていました。監督はステッキをお突きになって現場に現れるんです。でも撮影が始まって、「そうじゃないんだよ!」って直接何かを僕らに伝えに来るときには、杖を持っているんだけど突いていない。先っぽが浮いてるんですよ(笑)。そんな5G並の感度とモチベーションの高さを感じさせてくださる方でした。
現場にいらっしゃるスタッフの方たちも、映画を作ること自体が本当に好きでいてくれている。好きだから、やりたいからやっているっていう方たちが現場にいてくれているのがひしひしと伝わってくるし、そんな中で作業をさせてもらったので光栄でした。

