倍賞千恵子&木村拓哉、久しぶりの山田組参戦で改めて感じた映画の魅力
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木村拓哉
――倍賞さんは、近年『Arc アーク』で石川慶監督、『PLAN75』で早川千絵監督といった若い監督とも組まれています。一方、今回大ベテランの山田監督と一緒に作品づくりをされていて、さまざまな世代の監督と映画を作ることの魅力をどんなところに感じられていますか?
倍賞:映画の監督をやっている方は皆さん同じだと思います。若かろうが年がいっていようと。作り方や経験を重ねているだけの違いであって、映画が本当に好きでこういう映画を作りたいという思いがあるのは皆さん同じじゃないかなと思う。そんな思いを感じながら現場に参加できたときに映画の魅力を感じますね。
映画『TOKYOタクシー』場面写真 (C)2025映画「TOKYOタクシー」製作委員会
――木村さんは、映画の魅力はどんなところに感じられますか?
木村:山田監督ともその話になったんですけども、「君のフランス料理の作品は、あれはテレビドラマを撮っていた監督がやったのかい?」って言われて。「そうです」とお答えしたら、「あ、そうか」と。映画監督として持っているプライドは実在していると思うし、映画というカテゴリーの作品づくりをされている人たちのモチベーションっていうのは絶対にあると思うんです。でも山田監督は「そうなのか」って言った後に、「考え直さないといけないね」っておっしゃったんです。「テレビの監督とか、映画監督とか、そこに変な線引きはまったくないんだね。あれは素晴らしい。あの監督は素晴らしいね」って言ってくれました。「山田監督がそう言ってくれたぜ!」ってすぐに塚原(あゆ子)監督に伝えたくなりましたね。
なんだろう。運動をやっている人にとっての五輪、サッカーの人にとってのワールドカップなのか、やってることや熱量は一緒なんですけど、向き合い方もしくはその現場にいらっしゃる方たちがお持ちのプライド、責任感、挑戦、モチベーションというところには、映画というものが持つ価値観、におい、味っていうのがあるのかもしれないと感じます。その味っていうのを作り出しているのはそこにいる方たちのプライドだと思うし、本気の熱量だと思います。
監督は「実は『男はつらいよ』ってテレビ作品だったものを映画というものにしたんだ。そんなものは絶対に成功しないと笑われたんだよ」ともおっしゃっていました。なんていうか、本質的な部分は変わらないと思うんですけど、映画ってなった瞬間に襟付きのシャツになるというか。テレビドラマがTシャツだったら、映画ってなったら襟が付く感じというか、そういうのがあるようにも思います。もちろん「テレビドラマなのに今回は素材はシルクでいきましょう」とか、スリーピースのスーツ、イブニングドレスで構えるドラマもあるだろうし、映画なんだけど「今回はタンクトップで」という監督もいらっしゃるとは思いますが。
倍賞:彼の言ったことはとってもよくわかるし、本当にそうだと思います。
今どんどん映画が、自分の家でテレビで観られちゃうでしょう。どんな映画でも家で観られちゃうって不思議ですよね。でも「これだけは映画館へ来てよ」っていう映画があるし、『TOKYOタクシー』は特にそんな作品だと思うので、ぜひ映画館で観てほしいですね。
(取材・文:渡那拳 写真:高野広美)
映画『TOKYOタクシー』は、11月21日全国公開。

