蒔田彩珠、確かな実力に難役オファー続く「嬉しいけれど素に近いお芝居もやってみたい」
映画『万引き家族』『朝が来る』『ハピネス』や、ドラマ『妻、小学生になる。』『わたしの一番最悪なともだち』『御上先生』『DOCTOR PRICE』など、数々の話題作に出演し、内面的で繊細な演技が高く評価されている蒔田彩珠。クレバーで大人びた役柄のイメージが強い彼女だが、素顔は明るく、楽しいことが大好きな23歳だ。芥川賞作家・村田沙耶香の長編小説「消滅世界」の実写映画化で、性が消えた世界で揺れ動く主人公を演じた彼女が、難役への挑戦と役者としての今を語った。
【写真】蒔田彩珠23歳、大人の表情にあどけない笑顔も! インタビュー撮りおろしショット
◆非現実的な難役も「相手役の方々とお芝居を重ねていく中で徐々に理解していけた」
11月28日に全国公開される映画『消滅世界』は、人工授精で子どもを産むことが定着し、夫婦間の性行為がタブーとされた世界で、常識の枠組みの中でもがく若者たちを描く。川村誠監督の長編映画監督デビュー作となる本作で、主人公・雨音を演じるのは蒔田彩珠だ。
「台本を読んだ第一印象は、難しそうだなと。非現実的な設定なので、最初はあまり想像できませんでした。でも、現場に入って、相手のキャストの方々と一緒にお芝居を重ねていく中で、徐々に雨音の役を理解していくことができました」。
監督からは「演じるのではなく感じてほしい」と言われ、「まずは好きなようにやってくださいみたいな感じで任せてもらった」と振り返る。
夫婦間の性行為はタブーとされ、家庭の外の恋人か、二次元のキャラクターが恋愛や性愛の対象とされる世界。そんな中、両親が愛し合った結果誕生した雨音は、幼い頃は同級生達から「近親相姦」と揶揄され、いじめられ、自然と母親を敵対視するようになり、夫以外の相手やキャラクターと恋愛を重ねていく。
映画『消滅世界』場面写真 (C)2025「消滅世界」製作委員会
雨音の役をつかむうえで鍵を握っていたのは、夫役の柳俊太郎(※「柳」は旧字体が正式表記)をはじめ、高校の同級生の結木滉星、親友の夫で恋愛関係となる富田健太郎ら、男性キャスト達との関係性だ。それぞれ一対一で芝居をしていく中で、「雨音は人とこういう関わり方をする子なんだ」という本質をつかんでいったと言う。
「雨音は自分の思う“正常”“普通”を周りと比べて、周りの“正常”“普通”に合わせたいと思っている。でも、それは母親に教えられてきたことと違うから、そこに葛藤がある中でも周りと歩幅を合わせようとする強さも優しさもある人にしたいなと思いました」。
また、母親役の霧島れいかとの対峙シーンについては「ここ最近で一番緊張した。自分が幼い頃からずっとお母さんに一方的に言われ続けていた関係が、形勢逆転じゃないですけど、対等になって、逆に母を言いくるめようとする勢いを必要とするお芝居だったので。私がいっぱい間違えちゃって撮り直しました」と苦笑いを浮かべた。
雨音はやがて夫と共に実験都市の楽園(エデン)に移住する。無機的で美しく、怖くもあるエデンの建築空間については、こう振り返る。
「子役の皆さんはずっとこのエデンの空間にいるんですが、撮影中にずっと無邪気に遊んでいるんです(笑)。真っ白な服で、女の子たちはみんな同じ髪型をしていて。撮影はやっぱりちょっと奇妙な感じがありました」。

