西島秀俊、才能豊かな若手俳優との共演から刺激 駆け出し時代に学んだ大先輩の姿勢とは

大先輩の西島から「やりたいことがあったら、なんでも言っていい」と言葉をかけられた若手俳優たちは、どれほど心強かったことだろう。西島の言葉からは「若い人を大切にする」というスタンスが感じられるが、駆け出し時代の西島にも、そうやって気にかけてくれた先輩がいるという。
「僕のデビュー作は、『はぐれ刑事純情派』というテレビドラマシリーズでした。その頃の僕は演技を始めたばかりみたいな俳優でしたが、主演の藤田まことさんが『脚本でおかしいと思ったことは、ちゃんと言いなさい。やりたいことがあったら言っていいし、監督に言いづらいのであれば僕に言いなさい。とにかく思ったようにやりなさい』と言ってくださった。駆け出しの頃に藤田さんに出会えたことは、本当に幸運でした」と感謝しきり。「当時の現場では、藤田さんのような方は特殊だったと思います。もし今の自分にできることがあるとするならば、若い人たちには自由にやってもらいたいなと感じています」と尊敬する藤田さんから継承しているものも多い様子だ。
これまでの道のりについて、「僕はあまり器用なタイプではないので、もともと回り道もしています。ゆっくり、ゆっくりやっていくタイプ」だと分析した西島。現状といえば、今年公開された日・台・米合作映画『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』ではセリフが9割以上英語となる現場に飛び込み、今後もA24の新作映画『Enemies(原題)』や、ニコラス・ウィンディング・レフン監督の『Her Private Hell(原題)』、Amazon MGMスタジオ製作の『Road House 2』にも出演するなど、国境を超えたものづくりへの挑戦が続いている。

コツコツと続けたことが実を結んだかのように、精力的な活動を行いながら迎えた50代。西島は、「海外にチャレンジすることが目的ではなく、自分がチャレンジしたい窓口が広がっただけで、もちろん日本の作品もやっていきたいです。日本中、そして世界中にすばらしい俳優、監督の方々がたくさんいます。いろいろな人と出会いながら、一緒に作品に取り組んでいければと思っています」と展望を吐露。
「海外の作品に関しては、出演しているシーン数も少ないですし、ようやく一歩踏み出せたかなというところ。学ぶことも多いです。自分が現場で表現できることをやりながら、その場で吸収し、一歩一歩進んでいくのみです」と意気込み、「もちろん言葉や文化の違いもあり、これから壁を感じることも増えていくとは思います。それでも映画が好きで、いい作品をつくりたいという共通の目標があって集まっている人たちだからこそ、通じ合える部分があり、乗り越えられることもたくさんある」と絆を育んでいく過程は、大きな喜びだという。
その言葉通り、『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』の初日舞台挨拶では、共演者のグイ・ルンメイとけん玉やスイーツ談義で盛り上がる場面もあり、国境を超えてリスペクトし合う関係を築いたことが窺えた。西島は「ルンメイさんは、俳優としても人間としても本当にすばらしい方。ルンメイさんとお会いして、自分もこういう演技をしたいと思っていたことを改めて感じさせてくれました」としみじみ。
可能性の翼をどこまでも広げながら新たな出会いに心を震わせ、ものづくりの深淵を探り続ける日々。活力を満たしてくれるのは、大好きなスイーツだ。好きになったきっかけを聞くと、「以前、役作りで体を絞らなければいけない時に、とても厳しい食事制限をしたことがあります。やり終わった後に、何を食べたいかと思ったら、食事ではなくて甘いものだったんです」とくしゃっとした笑顔を見せていた。(取材・文:成田おり枝 写真:米玉利朋子[G.P.FLAG inc])
ドラマシリーズ『人間標本』は、Prime Videoにて12月19日より全5話一挙独占配信。

