酒井若菜、40代で決意した「自分ファーストな生き方」――13年ぶりの写真集『ぴこぴこ。』がもたらした解放
酒井若菜
酒井の演技を評して、人はよく「ハプニング芝居」と呼ぶ。画面上で見せる無防備な笑顔や涙は演じているのではなく「ハプニングとして起きたもの」という評価。しかし、その正体は、酒井が長年培ってきた「誠実さ」という名の技術と、自らを解放することへの静かな決意だった。
「私のお芝居を観てくださった方から “本当に笑ってしまった”“思わず泣いてしまった”などと言っていただけることが多いのですが、実は、ハプニングで笑ったり泣いたりしたことは一度もありません。すべて演技です。ただ、ハプニングに見えるということは、演技に固さがないということ、つまり『抜け』が見ている方に届いているわけです。もしそうならば、これほど嬉しいことはありません。これからはさらに考えずとも体だけで動いていけるような境地に辿り着きたい。今回の写真集は、そんな私の新しい挑戦を象徴するものとなりました」。
意味を持たない「ぴこぴこ。」という言葉。そのどこか軽やかで心地よい響きは、肩の力を抜きつつ誠実に表現と向き合おうとする今の酒井の姿と重なって聞こえる。
「これからの10年、20年。自分の感性を尊重しながら歩んでいった先に、どのような景色が待っているのか。クオリティを保持しながらも力を抜く面白さを、あらゆる表現の場面で楽しんでいきたいと思っています」。
30周年の記念碑は、重たい石碑ではなく、空へと舞い上がる風船のように軽く自由だ。酒井若菜の第2章は、今、この軽やかな響きと共に鮮やかに幕を開けた。「誠実」ながらも「抜け」を楽しみ、何にも縛られない自由な感性で佇む――。そんな酒井の魅力が存分に詰まった写真集と共に羽ばたき始める。(取材・文:磯部正和 写真:高野広美)
酒井若菜の最新写真集『ぴこぴこ。』は、講談社より発売中。
