矢野聖人、憑依型俳優“柳楽優弥”の役者魂に触れる「アプローチの仕方はすごい」

第133回芥川賞を受賞後、アメリカで「デイヴィッド・グディス賞」を日本人初受賞した中村文則の小説を原作にした映画『最後の命』。若者の胸の奥深くを鮮烈に描いた物語を、若手俳優たちが体当たりで演じて、観るものの心を捉える作品に仕上がっている。そんな本作で幼少期に巻き込まれた事件をきっかけに、心の闇を抱えた冴木裕一を好演した矢野聖人に撮影を振り返ってもらった。
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本作は、幼少期にある事件に巻き込まれた明瀬桂人(柳楽優弥)と冴木裕一(矢野)は、過去の傷に悩まされ、苦しみながらも希望を見いだす姿を描くドラマ。監督は、『まだ、人間』の松本准平が務める。
2010年に蜷川幸雄演出の舞台『身毒丸』のオーディションでグランプリに選出され、主役に抜擢されると、繊細さと不安定さを表現する演技で高い評価を得た矢野。本作では、暴力的な性に取り込まれ、全国指名手配される容疑者になってしまった若者を演じた。
オーディションで満場一致の即決で、冴木役を獲得したという矢野だが、「この役をやることは、とにかく不安だった」とクランクイン前の心境を吐露する。「監督とクランクイン前から、電話もしたし、LINEもしたし、メールもして、とにかく話し合った」。そして、監督と共に冴木という役柄を作り上げていった。 冴木は、激しい思いを胸に抱えて生きているという難しい役柄だ。それだけに「全部難しかった」と矢野はいう。
特に、冴木が連続強姦魔という設定であることから、作中には女性を暴行するシーンが繰り返し描かれる。矢野は、「もちろんそういう経験はないんで難しかったです(苦笑)。観客に嫌だなって思わせるように演じなければいけないんで、自分の中では殻を破ってやらなくちゃいけないと思って演じてました。撮影中は集中しているんで大丈夫なんですけど、終わった後は罪悪感もあって落ち込みましたね」と苦笑いで明かしてくれた。