俳優業に挑んだRADWIMPS野田洋次郎の人生観「喧嘩って次に向かうステップ」
先の発言で「基本、日常は残酷」と呟いた野田。大切なものが、時には残酷に自分を傷つけることがある。「僕も音楽が大嫌いになるし、自分の身を守ってくれたり愛してくれるものが、自分の心を削ることって、誰にでもあると思う」。しかし、そのことこそが、なくてはならない感情だと野田は力説する。
「嫌いになったり憎んだりしたことがないものって、本当は好きじゃないんだと思う。例えば、喧嘩をしないカップルって僕は信じられない。お互いの中にある大事なものを分かって欲しいと思ってぶつかる。喧嘩ってネガティブなエネルギーじゃなく、次に向かうステップだと思うんです。憎めば憎むほど、愛しているんだなって逆説的に捉えてしまうんです」。
劇中、宏は、杉咲花演じる真衣と出会い、自分がすべきことに気づく。10歳以上年の離れた男女。松永監督は瑞々しく二人を描き切った。「ある側面では恋愛関係、ある側面では同士。間違いなく言えることは、お互い“たった一つ”に出会えた感覚。人ってそういう存在を求めるのだろうし、僕は求めていたい」と野田は二人の関係に強く共感する。
本作を経験した野田は、松永監督が作り上げた世界観に「表現として素晴らしいし、監督にはジェラシーを感じました。もっと自分も頑張ろうってね」とライバル心をたぎらせる。一方で、野田と共演したいと集まった大竹しのぶや宮沢りえといった俳優たちには「日本で指折りの役者さんたちの演技を目の前で見て、その人たちが世界を作ってくれる。幸せな経験でした」と脱帽していた。(取材・文・写真:磯部正和)
映画『トイレのピエタ』は6月6日より公開。