小関裕太、20年超のキャリアを重ねて30歳に 10代で経験した転機と意識の変化とは?

ドラマ『波うららかに、めおと日和』(フジテレビ)で演じた深見龍之介役が大きな話題を集めた小関裕太。人気ドラマに欠かせない存在として映像作品での活躍が続く中、『キングダム』『ロミオ&ジュリエット』など舞台でも確かな演技力で輝きを放つ。『サヨナラソング-帰ってきた鶴-』で鴻上尚史と初タッグを組み、また新たな一面を見せる小関に、本作への思いや、20年を超えるキャリアの中で迎えた転機について話を聞いた。
【写真】小関裕太、色気あふれる撮りおろしショット
◆『鶴女房』の中の与吉、現実世界の宮瀬 対照的な二役に挑戦
本作は、「生きのびること」をテーマとして、日本の民話『鶴女房』のその後の世界と、ある家族を中心とした現実の世界が交錯しながら展開されていくオリジナル新作。2つの世界が複雑に絡み合いながら、「生きる」ことの本質に迫る。物語は、ある売れない作家が残した遺書のような小説から始まり、残された者と「生きのびること」を描く。
作・演出は鴻上尚史が務め、小関のほか、臼田あさ美、太田基裕、安西慎太郎らが出演。小関は『鶴女房』の中の与吉と、現代の売れない小説家・宮瀬の二役を演じる。
KOKAMI@network vol.21『サヨナラソングー帰ってきた鶴ー』ビジュアル
――『鶴女房』へのリスペクトが込められた本作。小関さんは、『鶴女房』『鶴の恩返し』にはどんな印象をお持ちでしたか?
小関:僕は絵本から入っているので、「なんだ、この旦那は。欲深いというか好奇心で覗いてしまったんだな」という印象がずっと強かったんです。でも今回改めて読み返すと印象が変わってきました。この作品に初めて接したころから25年以上経ち、いろいろな経験をしてきたことで、「いや~。こういうことって起こりうるよな…」「なんかしょうがなかったのかもしれないな…」と寄り添う気持ちが生まれました。
本作では、それでも帰ってきてほしいという思いがようやく届いて鶴は戻ってきてくれるのですが、実際鶴はどんなことを考えていたのかということにも踏み入って考えるようになりましたし、新しい目線もできました。
――本作にはコメディー要素も多く含まれていますが、お稽古を重ねられての感想はいかがですか?
小関:難しいです。今回の作品ではこれまで見たことのない景色が見られそうだなと感じています。先日『ヒルナンデス!』でご一緒した南原清隆さんが「次の作品、鴻上さんなんだ!」と声をかけてくださったのですが、南原さんの世代のお笑いの方々も鴻上さんをはじめとしたあの時代の演劇にすごく注目されていたとおっしゃっていました。
鴻上さんは「コントではない」とおっしゃっているんですけど、それでもやっぱりお笑いのテンポ感というか、正解、教科書みたいなものを鴻上さんがご自身の中にお持ちなので、そこに思い切り乗っかってみて、いろいろな発見をしている最中です。
鴻上さんは文学的な方なんですけど、お客様目線がすごく強い方だなという印象があります。観に来てくださった方がどう感じとるのかということを考えられているので、お客様が見ていて気持ちのいいテンポ感を学べる機会になっています。
――『鶴女房』の中の与吉と、現代パートの宮瀬の二役を演じられます。
小関:本作は、現実の世界なのか、『鶴女房』の続きを見ているのか、どっちだろうと分からなくなる錯覚が面白いんですね。その中で与吉はまさに冒頭から出てきますし、与吉の物語なのかなって思うような部分があります。与吉はすごくエネルギッシュでとにかく前に前に、おつうのことを思って、悩んで。失言しちゃってそれをごまかそうとしたりと愛嬌のある、ちょっと詰めが甘いかわいらしいキャラクターです。出来心で覗いてしまうという自分のほんのちょっとした好奇心が、彼女との関係を断ってしまう原因になったというのが、おっちょこちょいというか、彼のうっかりな性格を表しているなと思います。
一方の宮瀬はプライドが高くて、俺はこういうものを残したいんだっていうエゴというか思いが込められた小説を書くタイプの人物。新人賞にノミネートされたという第一作の後が続かず、みんなが読みたくなるようなエンタメ性の高い作品を書く妻に比べて売れていなくて、でもプライドがあって…というコンプレックスの塊みたいなキャラクターです。
役作りとしては、与吉はおっちょこちょいなところがありつつ、妻であるおつうを愛しているんだけれど、なんか言ってることが空回りして、でもそれが愛らしいというところを固めていけたらと思っています。宮瀬は、お客様に「しょうもないな、こいつ」と思われるキャラクターになることで、この作品がどんどん生き生きしていくと思うので、考えながら役を作り上げているところです。