写真家ロベール・ドアノー「カメラは腕の一部」 孫娘が明かす真実と素顔とは

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フランスの国民的写真家ロベール・ドアノーの真の姿を捉えたドキュメンタリー映画『パリが愛した写真家 ロベール・ドアノー<永遠の3秒>』公開を記念して、メガホンを取ったドアノーの孫娘クレモンティーヌ・ドルディル監督が来日。テロが多発する不安定な時代だからこそ、「祖父の姿を通して、自由に、軽やかに、生きることの“幸せ”を伝えたかった」と作品への思いを真摯に語った。
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本作は、撮影風景やインタビューなど当時の貴重な資料映像や、女優のサビーヌ・アゼマら親交のあった著名人の証言により、写真家ロベール・ドアノーの知られざる素顔と創作の秘密に迫る初のドキュメンタリー映画。家族ならではの視点から、優しくユーモア溢れる祖父の顔、撮影にこだわり抜く写真家の顔、さらには世界中が恋した写真「パリ市庁舎前のキス」の撮影秘話などが描かれる。
ラジオ局に勤めていた頃、祖父ドアノーのドキュメンタリー番組を作ることになったドルディル監督は、制作過程の中で、スーパー8mmフィルムで撮影されたドアノーの映像が出てきたことから、「これはもう、映画を作るしかない!」と奮い立ったという。さらにこの時期、日本を訪れたドルディル監督は、ドアノーの著書『不完全なレンズで』(月曜社刊)の訳者・堀江敏幸氏と出会い、祖父に対する造詣の深さに感動し、「ドアノーのことを世界中の人々にもっと知ってほしい」と、映画化への決意を固めた。
ドルディル監督は、かねてから「ドアノーは世界に愛を発信し続けた人」と語っているが、皮肉にも、本作を制作するという契約書にサインをした日、真逆のことが身近なところで起きた。パリを震撼させた風刺画を巡る“シャルリー・エブド襲撃事件”が発生したのだ。「しかも、私たちは編集部の隣のレストランにいたのよ!その後もいくつか事件が続いたけれど、これが私たちの背中をさらに押してくれたの。ドアノーの映画で少しでもこの状況を慰められたら」と思いはさらに深まった。