伊勢谷友介、『忍びの国』から感じた“現代社会へ通じるテーマ”
そんななか、伊勢谷は「人類が地球に生き残るため」という目標を掲げリバースプロジェクトを立ち上げた。俳優業とプロジェクトの両立について「俳優業をやることによって、自分の活動も知ってもらえる機会が増えました。現在リバースプロジェクトは株式会社化して9年目になります。最初は『善意の会社なんて回るわけがない』とありとあらゆる人に言われましたが、存続しています」と相乗効果を挙げる。
「以前は作家性の強い映画に出たいという思いはあったのですが、いまは自分が積み重ねてきたことに対して評価していただき、作品のオファーをいただくということが自分のスタンスになっています」と出演する作品への自身の考え方を述べた伊勢谷だが、本作については「描かれている忍びの国の価値判断や基準は、人間にとってまさしく機能不全であり、ある意味逆説的におもしろい」と興味を示す。
さらに「マズローの5段階欲求というものがあると思いますが、この映画の舞台になっている戦国時代というのは、いつやられてもおかしくないと、常に命の危険にさらされているので、欲に忠実であり、それが種族として強かった」と『忍びの国』で描かれている世界を分析する。
一方で「いまの時代、日本は急に命の危険にさらされるような状況にはないですよね。そのなかで、僕は人にとって最大のエネルギーとなることは『あなたの命が未来のため、種族のためになっている』と人から評価してもらえることだと思うんです。もっと身近に言えば『生きていてくれてありがとう』と人に思ってもらえること。それによって自分が生かされていると実感できるんです」と持論を展開すると「この映画で描かれた忍びとは逆の考えですが、この対比はおもしろい。この映画のあとティーチインしたいですね」と笑顔で語った。(取材・文・写真:磯部正和)
映画『忍びの国』は全国公開中。