伊勢谷友介、『忍びの国』から感じた“現代社会へ通じるテーマ”

人気作家・和田竜が伊賀忍者を題材にした同名小説を映画化した『忍びの国』で、織田軍の武将・日置大膳を演じた伊勢谷友介。ポップな仕立てでありながら「人類の敵は人類」という現代社会へのアンチテーゼも含んでいる本作について「このテーマが好きで参加した部分がある」と語った伊勢谷が俳優業や欲望という概念について語った。
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伊勢谷演じる日置大膳は、心技体に優れ、武の達人にしてブレることのない猛者だ。「主役である忍びの捉え方が、私利私欲にまみれているというイレギュラーな作品で、逆に僕が演じた大膳はオーソドックスな戦国武将。アカデミックな“THE・侍”を目指しました」と役作りについて語ると「ただ、大膳は武の達人であり百戦錬磨の武将。自分の顔だけでは自信が持てなかったので、顔に傷をつけてもらったり、髭を生やしたりして箔をつけました」というアプローチ方法を明かす。
本作は、「侍VS忍び」という対立構図を、中村義洋監督の持ち味でもあるポップなテイストで軽快に描いているが、作品のなかには「欲にまみれた虎狼の族」と称される伊賀の忍者たちの利己主義的な考えが、現代の世の中にもはびこっていると警鐘を鳴らす場面もある。
こうしたメッセージについて伊勢谷は「僕はこうしたテーマ性に惹かれて、この映画に参加してみたいと思った部分もあるんです」と語り出すと「現状を考えると、我々人類の敵は人類なんですよね。徒党を組んで、なにか外的なものをつぶして新しい世界を作るというのは前時代的。本来は自分のなかにいる敵を見越して、論理的な思考を持って人との協同に移すという動きが大切なんですよね」と作品に内在するメッセージを読み解く。
これまでも数々の映画作品に参加しているが「僕自身、映画が大好きで、映画監督を志しているなかで、出てきた俳優という道。でも映画が世の中にソーシャルインパクトを与えられるかと考えると実際は難しい。そもそも映画自体がザッピングのなかの一つになってしまっているという事実は否定できないと思います」と映画というメディアの現状を冷静に分析する。