全米記録的ヒット! ブラッド・バード監督が証明したアニメ映画の底力
「アメリカの映画業界では、まだまだアニメの地位は低く、クリエーターを見下すような偏見みたいなものが根強くある。ところがトムは、アニメの演出も実写の演出も、同等のものとして感じていてくれたんだ。だから、彼から“実写映画に興味あるかい?”って連絡が来たとき、“もちろん!”と即答したよ」。アニメの世界で磨いた演出力がいかにレベルの高いものか、バード監督はそれを証明する使命を自ら負うことになるが、その結果は言わずもがな、大ヒットした映画を観れば一目瞭然だ。
そして、バード監督のアイデアに溢れた演出力は、自身の名声だけでなく、アニメ・クリエーター全員の希望の光となった。実写で培った経験は、間違いなく本作へと還元されているが、忘れてならないのが、彼を支えたピクサー・スタッフの力。その中には成田裕明(エフェクト・テクニカル・ディレクター)、原島朋幸(アニメーター)ら日本人クリエーターも名を連ねる。「世界中から優秀な人材が集まってくることで、作品がより豊かな表現になることはうれしいこと。特に日本人スタッフは、ディテールに対する注意深さ、こだわりが素晴らしいね。ある意味、アニメのアプローチとして最も大切な要素でもあるから」と称賛の言葉を贈っていた。(取材・文・写真:坂田正樹)
映画『インクレディブル・ファミリー』は公開中。