志尊淳、際立つ役柄の多彩さにも「どんな役もアプローチと思いは同じ」
そんな中、志尊が演じる役柄の多彩さは、いわゆる性的マイノリティ(『半分、青い。』『女子的生活』)、激しいアクションを求められるヤクザの用心棒(『探偵はBARにいる3』)、さらには地球侵略を目論みアイドルとなる宇宙人(『ドルメンX』)と同世代の中でも際立っている。
だが当人は「そう言っていただけるのが不思議な感じがするくらい、自分の中で特別な思いは抱いていない」とあっけらかんと語る。
「何の特徴もないように見える学生の役でも、その役について考えていくと、一個人として必ずそれぞれの色を持っている。その内面を掘り下げていくアプローチ、人生を全うしようという思いはどの役も変わらないんです。ただ“マイノリティ”と言われる方々を演じる際に、その立場を象徴して発信する部分もあるので、そこでの責任の重さは自覚しています。でも、そういう役が『続いてるね』と言われても、僕の中でそうした感覚は全くないですね」。
“属性”ではなく、その人の中にある個性へのまなざし――。その誠実さが、多様な役を彼の元に呼び込むのかもしれない。「今、俳優という仕事のどこに魅力を感じるか?」という問いに対して出てきた答えも、自身の役柄のことではなく、“相手”への興味だった。
「演技で会話をする相手によって、引き出されるものが違うのが新鮮で面白いですね。対峙して『この人、すごいな』と感じる部分がそれぞれにあって、でもそれはカメラの前で面と向かって対峙している僕だからこそ感じられるものなんですよね。それが楽しいです」。(取材・文・写真:黒豆直樹)
映画『走れ!T校バスケット部』は公開中。