『ハード・コア』山下敦弘監督&原作者いましろたかし対談「いびつで破綻してる(笑)」
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――原作では、最初は右近と牛山という社会のはみだし者の日常が描かれていましたが、突然、埋蔵金を探す結社や謎のロボットが登場するなど激しい展開を見せます。
いましろ:そこは僕が、狩撫さんに「漫画らしい荒唐無稽な物語にしたい」って注文したんです。「ロボットか幽霊を出したい」ってお願いしたのを覚えています。埋蔵金は当時、糸井重里が徳川埋蔵金の発掘をやってて、僕が熱く語っていたのを汲んでくれたんじゃないかと(笑)。
山下:『ギミア・ぶれいく』(TBS系)でやってましたね。僕も絶対に見つかるはずだって期待しながら見ていました(笑)。
いましろ:でも、雑誌で連載してると、展開がすごく唐突なんですよ。急に結社が出てきたり、釣りに行ったらクジラが釣れたり(笑)。
山下:原作の連載という時間軸ゆえのいびつさというか(笑)、バランスの悪さを映画でもそのまま出そうと思って、あの物語の入口と出口が全く違う感じをそのまま映画に反映させています。
いましろ:いびつで破綻してる(笑)。これを映画にするって脚本の向井(康介)くんはかなり悩んだんじゃないかと…(笑)。
原作者いましろたかし
――山田孝之、荒川良々、佐藤健という人気俳優が出てるけど、キラキラもしていないし、かといってコメディーと言うのも何か違うような…。
山下:僕自身も作っていく中で「これ、笑っていいのか?」と思うようになったんです。昔は笑って読んでたのに、いま読むとシリアスに感じて。だから、現場で面白くて笑ったシーンが意外とハマらずに編集でカットになったりしてるんです。ちょっと複雑なんですよね。「笑ってほしい」と思いつつ、シリアスに受け取ってほしい思いもあって…。
いましろ:山下さん自身、そういう映画が好きなんでしょ? シリアスだけど笑える映画。
山下:好きですね。「笑わせたい」というより、必死だから笑える感じが。だから今回も、笑ってほしいと思いつつ、あんまり笑われると「笑い過ぎだろ!」って怒りそうな気がします(笑)。(取材・文・写真:黒豆直樹)
映画『ハード・コア』は公開中。