『カメ止め』の裏で…構想3年の新作が完成 上田監督が若手女優らと臨んだ新たな挑戦
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そのような脚本を一体どのように練り上げていったのだろうか。「3人の監督で、オムニバスではなく、筋の通った1本の映画を撮るにあたって、どういった構成がベストなのか…と2年以上考えましたね。議論、議論でしたよ!」と上田監督。「最初はひとりの女優を10代、20代、30代と年代を分けて撮って、それを組み合わせるかとか。でもそうするとオムニバスっぽくなってしまう…と悩んだり」と数々の産みの苦労があったという。
石川瑠華
「いつでも楽しむことと、挑戦することは忘れないでいたい」という上田監督。本作での取り組みについて「3人で監督するという、その体制自体が異例のこと。 “そんなことやめておけ”“うまくいくはずない”といった反対意見がたくさん上がった」と打ち明ける。「無茶なこと、難しそうだと思えることだからこそ、やってみたいと思った」と高いハードルも楽しみに変えてしまうのが、上田監督の大きな強み。「僕は“どういう物語を作るか”と同時に、“どういう体制で映画を作るか”ということにも、チャレンジしていきたいと思っていて。今回は亀田家の演出を中泉さん、戌井家を浅沼さん、兎草家を僕が、と分けて担当したことで、“いびつさ”の残った映画になった。それが本作の魅力につながっていてほしい!」と新たな試みへの率直な思いを吐露する。
井桁弘恵
女優陣にとっても本作は挑戦だったそうで、石川は「この映画に出ること自体が、私にとって大きなチャレンジ。青春映画と見せかけて、その裏の情報がバレないように演じていかなければいけなかったんです」と語る。「難しい役でしたが、現場に入ったらお母さん役の渡辺真起子さんが、心に刺さるお母さんを演じてくださった。真起子さんを目の前にすることで、美羽になれた」と感謝。さらに「監督たちの熱気がすごくて! 3人ともすごい前のめりなんです」と続けると、井桁も「監督方は、私たちの意見もすごく聞いてくれて、それを反映してくださる現場でした。言われたそのままを演じるのではなく、“自分できちんと考えて演じる”ということにチャレンジさせていただき、貴重な経験になりました。それは今後にもつながると思っています」と大きな転機となった様子。上田監督をはじめとするスタッフ陣の挑戦への情熱が、若手女優たちにもしっかりと伝染していた。(取材・文:成田おり枝 写真:高野広美)
上田慎一郎監督
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