最近のハリウッド・ホラーは「牙のないライオン」 残酷ホラーの名手パスカル・ロジェが唱える定義
『マーターズ』でもそうだったように、本作でも観る者をうろたえさせる強烈なバイオレンス描写が登場する。そこに監督の強い意志があることは明確だが、真意を改めて問うてみると、「暴力表現をトーンダウンさせることは簡単だ。でもそれは自己検閲であり、それをやってしまうのは自分の弱さだと思う」ときっぱり。
「僕は登場人物、そして観客に本物の“悪”を体験してほしいんだ。痛みや苦悩を経験することによって、より良い人間になれるかもしれない。それこそがこの作品の意義であり、ホラーの定義だとさえ思っている。ホラー映画というのは、安心して観れるものであってはいけないと思っているし、何らかの感情を抱かせるものであるべきだ。登場人物、そして観客がそれを自分に問いかけること。それが重要なんだ」。
映画『ゴーストランドの惨劇』場面写真(C) 2017 ‐ 5656 FILMS ‐INCIDENT PRODUCTIONS ‐MARS FILMS ‐LOGICAL PICTURES
そしてこれだけは伝えたいとして、次のように付け加えた。「僕は、登場人物をいじめて、安全な場所からあざ笑っているわけではない。彼女たちが苦しんでいるときは、僕自身もその瞬間を分かち合っているつもりだ。僕と彼女たちの間には全く距離がない。それは僕の映画製作においてとても重要なことなんだ」。
「ホラーは安全なものであってはいけない」と語気を強める監督は、昨今のハリウッド・ホラーにも思うところがあるようで、「最近のハリウッドの、とくに大きな予算をかけた作品は、ヒットさせるために“安全”に作っている。牙のないライオンと言ったところだ。プロデューサーたちに作品をコントロールされているのが観ていてよくわかるね。ああなってしまっては、孤独なホラー作家たちの叫びは聞こえない。哀しいことだよ」。
「ホラー映画は自由であるべきで、そしてワイルドで、実験的であるべきだ」。そう力強く宣言するロジェ監督。確固たる信念のもと作り上げられる作品に、これからも目が離せない。(取材・文:編集部)
映画『ゴーストランドの惨劇』は公開中。
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