森高千里、21年ぶりの全国ツアーで感じたライブへの思いと日本の“街”の素晴らしさ
ライブ活動も年々数を重ね、昨年の全国ツアーを決断したときも「もちろん『やれるのかな』という不安はありました」というが、「いまやらなければ、もう全国ツアーはやれないかもしれない。後悔したくない」という思いで前に進んだ。
「20代の頃は約7ヵ月で60公演ぐらいの全国ツアーをやっていましたが、昨年のツアーは週末を中心に1年かけてやるスケジュールだったので、ハードという感じではなかったんです。ただ逆に1年間ずっとツアーを行うということで、体調管理にはより気を使いました」。
このツアー中に50歳を迎えた森高だが、やってみて「やっぱりステージに立って歌うことは楽しい」と改めて実感したという。さらに20代のときとはまったく違う感覚も得た。
「20代の全国ツアーも楽しんでやっていましたが、今振り返ってみると当時は『伝えなきゃ』『歌詞や段取りを覚えなきゃ』という思いが強く、自分自身にもすごくプレッシャーをかけていました。失敗したときの落ち込みもすごかったんです。でも去年のツアーは、自分の気持ちに余裕があったということもありますが、純粋に自分も楽しもうと思えたんです。それがお客さんにも伝わって、すごくリラックスした雰囲気でコンサートが行えました」。
当時は「40代、50代になってもステージに立っているなんてまったく想像できなかった」と語った森高。同じ曲でも20代とは表現方法も変わった。「いまだからできる表現」をファンに聴いてもらえることも、長く活動を続けてきたからこそできる醍醐味(だいごみ)だ。
実は昨年から2021年まで2年半をかけて全都道府県をライブで回る予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で延期もしくは中止になってしまった。「去年の流れのなかで、今年もライブを開催したかった」と率直な胸の内を明かしていたが「ちゃんと準備が整えばまた皆さんにお会いできると思う」といまは前向きに捉えているという。7月には無観客の配信ライブを行った森高だが「やっぱり拍手とか声援がパワーになっているんだと改めて実感しました」とファンと交流できるライブの再開を心待ちにする。
「何歳までやれるかはわかりませんが、ファンの皆さんが望んでくださる限り、ライブは続けていきたいです。そして、昨年全国をまわれたことは、とても貴重なことでした。ちょっと寂しい商店街もありましたが、若い世代の方が新しいことも始めていたりして、元気をもらえました。改めて日本の四季の美しさや各地にすてきな街があることを知り感動しました。いつか皆さんの愛する『この街』を訪れることができる日を楽しみにしています」とうれしい言葉を残してくれた。(取材・文:磯部正和)
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