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佐藤二朗、パブリックイメージとは真逆の監督作――“二朗さんって本当はどういう人?”

映画

■とにかく「俳優のいい芝居が観たい」

 佐藤がこの脚本を手掛けたのは13年前。なぜ、こういう設定にしたのかは、もう定かではないようだが、「狙いだけははっきりとしていた」と振り返る。「僕は“負”を抱えた人間が、物語が進むにつれて障害となる要因がすべて取っ払われて、すごくいい状態でエンディングを迎える、という作品にはあまり心を惹(ひ)かれないんです。“負”は昨日と同じように相変わらずそこにある。でも、『明日もなんとか生きてみよう」という物語にぐっとくるというか、そこにドラマを感じるんですよね」。


 舞台では、主人公・得太を佐藤自身が演じているが、映画版では山田に託した。その意図はなんだったのか。「彼は日本を代表する俳優の一人だと思っているので、今まで目にしたことのない山田孝之の芝居が観たかったんです。弱虫で、頭が悪くて、そのくせ吠えるだけ吠える、どうしようもなく不幸なチンピラ青年を孝之で観たかった。里依紗ちゃんも同じ理由ですね。これまでいろんな役を演じてきたと思いますが、あそこまで内圧を抱えた役を観たことがなかったので。SNSでちょっとほろ酔いで書いちゃったこともあるんですが、とにかく『俳優のいい芝居が観たい』…もうこれに尽きますね。坂井真紀さんも、特別出演の向井理さんも、この映画に出ているすべての俳優さんは、皆さんそういう理由でオファーさせていただいているんです」。

映画『はるヲうるひと』より (C) 2020「はるヲうるひと」製作委員会
 モニターを観るたびに、「俳優としてカメラの前に立つのが怖くなった」という佐藤。オフィシャルコメントでも言っていたが、「簡単には登れない山を、生傷を抱えながら、自分が生きるために必死で登り詰めた。それぞれの役者がそんな芝居を観せてくれた」本作。まさに必死に食らいついた俳優たちの演技そのものが、この映画の最大の見どころといっても過言ではないだろう。(取材・文:坂田正樹 写真:ヨシダヤスシ)

 映画『はるヲうるひと』は6月4日より全国公開。

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