西田尚美、娘からダメ出しを受ける母親としての素顔 子育ては“メリハリ”を大切に
◆偶然が重なって始まった女優業 何もできなかった初主演映画が転機に
女優として数々の作品に出演し、活躍する西田だが、その素顔をメディアで見せることはあまりない。「寛容ではない」と話す西田が思う、自分自身の性格を聞いてみると、「ダメ人間です」と朗らかに笑いながら教えてくれた。
「子どもからは『本当にママはダメ人間』だと思われていると思います(笑)。すごくトロくて、鈍くさいって、ダメ出しばっかりされちゃうんですよ(笑)。なので、“できる人”の役がくるとすごく緊張してしまって、どう演じていいのか分からない。自分にそんな引き出しはあるのかなと思って、毎回、悪戦苦闘しています」。
今回の取材では、そのチャーミングな素顔も見せてくれた西田は、モデルとして活躍後、1993年にテレビドラマ『オレたちのオーレ!』(MBS・TBS系)への出演をきっかけに女優業をスタートした。当時は「たまたまオーディションに行って受かったからで、それほど女優業への思いがあったわけではないんです」という。
「偶然が重なって女優業をやることになってしまったけれど、最初は本当に全然できなかった。自分が何を求められているのかも分からなかったし、それが分かったとしても何も返せなかった。何も理解できていないのが、すごく悔しくて…。もっと分かりたい、もっと返したいと思って、次もやってみようと思ったのが始まりでした」。
大きな転機となったのは、映画初主演を果たした『ひみつの花園』だ。
「最初の本読みで、矢口史靖監督からことごとくダメ出しされたんです(苦笑)。それで、監督の言うがままに演じていたら、出来上がった作品をみんなが楽しんでくれて、笑ってくれた。海外の映画祭に行けば、海外の方にも喜んでもらえた。その姿を目の当たりにして、『みんなでものを作ることってこんなに楽しかったんだ』と初めて思えました。そこからは、女優をやりたいという思いが強く芽生えたように思います」。
今秋には、連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)への出演も控える。自身2度目となる朝ドラ出演は、上白石萌音が演じる主人公・橘安子の母・小しず役。取材当時、撮影真っ最中だったそうで、「方言を使いながら昭和の人間を演じていますが、今はちょうど戦前から戦中の時代を撮影しているので、なかなかしんどいです」と振り返る。そして、「時代が変わっていくのを実際に体感すると『こんな時代があったんだな』って、今、普通に暮らしていることに複雑な思いを覚えます」と思いを寄せた。
本作で見せる子どもの意思を尊重し、寄り添う母親・春子。そして、朝ドラで見せる家族の幸せを願う心優しい母親・小しず。作品ごとにさまざまな顔を見せる、女優・西田尚美。今後も、その人の体温や人生を感じる演技で視聴者にいろいろな感情を届けてくれそうだ。(取材・文:嶋田真己 写真:高野広美)
映画『青葉家のテーブル』は、6月18日公開。