磯村勇斗、自分の言葉にしっかり責任が持てる30代に 理想の大人像は三島由紀夫
◆似たような役ばかりやらないように心掛ける
徳川第14代将軍から、兄貴分を慕う半グレ、純朴な刑事に“ジルベール”系同性愛者の美少年まで、磯村が体現する役どころは幅広く、かつそのどれもが抜群の存在感を放つ。そうした役柄の多様さという強みを本人はどのように感じているのだろう。自身の中で、乗れる役というものはあるのだろうか? 「強みとかは思ったことはないですね。幅広いように感じていただけているだけで…。ただ、似たような役ばかりをやらないということは俳優として心掛けてはいます。悪い人であろうが、いい人であろうが、気分が乗るときはありますし、乗らないときもありますね。それが偏っているわけではないので、自分にハマる時は乗れるという感じでしょうか」といたって自然体だ。
磯村勇斗には“ワル”がよく似合うという声も聞こえるが、「どうでしょう?(笑) もともと僕がヤクザだったっていうこともあるんですかね? あ、冗談ですけどね(笑)。不良には男のロマンが詰まっているというか、悪いことをしている人もいますけど、かっこいいじゃないですか、男として。自分の中であるんですよね、理想というか、自分がなってみたいという思いが」と分析する。
◆30代は自分の言葉に責任を持てる大人に
そんな磯村も先日29歳の誕生日を迎えた。「あっという間でした」という20代を送り、いよいよ迎える30代は「30代になってからが、自分のやりたいことができる気がするので、20代よりもいろいろと自由に楽しんで、自分のやりたいことを見つけていけたらいいなと思います」と目を輝かせる。理想の大人像を尋ねると「三島由紀夫さんですかね(笑)。あれくらいカリスマ的な人って今の日本にいないというか、見たことがないので…。政治的なことではなく、偽りのない自分の言葉で世の中と闘える人、仕事に対して闘える人っていうのはかっこいいなと思うんですよね。自分の言葉にしっかり責任を持った大人になっていきたい」ときっぱり。
出演作が途切れず、忙しい毎日を送るが「家に帰っても台本覚えなきゃとか、仕事のこと、役のことを考える時間の方が圧倒的に多い」という。「サウナに無理やり行ってリセットするとか、ゲームをぽけーっとやったりすることでオフを作ったり」しているそうだ。
「観るというよりは心で感じてもらいたい作品なので、あまり難しく考えずにフラットな気持ちで見てほしい」という『泥人魚』での経験を通して、これからも、さらに輝きの増した新しい磯村勇斗に出会うことができそうだ。(取材・文:編集部 写真:高野広美)
COCOON PRODUCTION 2021『泥人魚』は、12月6~29日、東京・Bunkamuraシアターコクーンにて上演。