磯村勇斗、自分の言葉にしっかり責任が持てる30代に 理想の大人像は三島由紀夫
『青天を衝け』『ヤクザと家族 The Family』『東京リベンジャーズ』『劇場版 きのう何食べた?』…2021年も幅広い作品で確かな演技力を発揮し続ける俳優の磯村勇斗。そんな輝きを増した一年の締めくくりに臨むのが、自身初の唐十郎作品への出演となる舞台『泥人魚』だ。不安やプレッシャーもあったという新たな挑戦を前に、現在の思いを聞いた。
【写真】磯村勇斗、スタイル抜群な全身ショット
◆初めての唐十郎ワールドに試行錯誤の日々
劇作家・唐十郎の傑作戯曲である本作は、2003年4月、「劇団 唐組」により初演され、読売文学賞戯曲・シナリオ賞、紀伊國屋演劇賞(個人賞)、鶴屋南北戯曲賞、読売演劇大賞優秀演出家賞を受賞。“唐十郎の集大成”とも称される名作で、今回が初演以来18年ぶりの上演となる。演出は、唐十郎と蜷川幸雄を師とし、アンダーグラウンド演劇に真正面から取り組んできた劇団・新宿梁山泊主宰の金守珍。舞台では4作目の唐作品登場となる宮沢りえが主演を務め、愛希れいか、岡田義徳、六平直政、風間杜夫と実力と個性を兼ね備えたキャストが顔をそろえた。
COCOON PRODUCTION 2021『泥人魚』 ビジュアル
本作出演のオファーを「驚きましたし、正直不安やプレッシャーもありました」と振り返り、「戯曲自体もすぐに理解できる内容ではなく難解な部分もあるし、どう組み立てていこうか、どうやって演じていこうかという迷路に入っていく感じでした」と心境を吐露する磯村。インタビューは稽古開始間もなくのタイミングだったこともあり、まだ作品の世界観や役の本質をつかむのに試行錯誤を繰り返している様子で、作品の魅力も「やっといま徐々に見えてきたというか、少し感じてきているところ」だと話す。「社会的なテーマもありますけど、それを前面に出すのではなくて、そこに生きている人たちの思いとか憧れ、失ったもの、愛するものを大事にしている台本だなと感じました」と語る。
本作を生み出した唐十郎の魅力を尋ねると、「爆発的な人なんだろうなと思います」との答えが。「セリフが、詩(うた)のように奏でていくような書き方をされているし、普通では考えられないというか、頭で考える方ではない方という印象があります」とも。「こういう台本は、チャレンジしたことがないので、(自分を)ぶつけてぶつけてやっと見えてくるものだと思います。(演出の)金さん自身も考えないでやったほうがつかみやすいとおっしゃっていたので、そういうところを早く見つけたいです」と意気込む。
◆「まとう空気が美しい」宮沢りえの輝きに魅了
主演の宮沢と芝居で本格的に絡むのはほぼ初めて。宮沢が過去に出演した唐作品の資料映像も見たそうで、その輝きに魅了されたと話す。「役の世界を作り出すというか、まとう空気が美しかったです。目が魅力的だとも思いました。役に寄り添って作っていく方だと思うので、観ていてすごくすてきな俳優さんだなと思います」と印象を教えてくれた。「風間さんとはドラマで一度ご一緒したことがありますが、かなりエネルギーのある方ですし、何が飛んでくるか分からない面白さがあります。愛希さんも元宝塚の方ということで、そこでしか出せない魅力を持っていると思うので楽しみにしています」と多彩な共演陣に刺激を受けている。
磯村にとって本作は2年ぶりの舞台出演。舞台の魅力を聞くと「俳優として参加する以上は、映画もドラマも舞台もスタンスは同じですが、舞台はエネルギーをものすごく放出する空間だと感じています。かなりの集中力と体力が必要だと思いますし、とても神聖であり、怪物が潜んでいる世界だとも思うので、ドキドキします」と語る。「(舞台は)できあがったものをお客さんに観ていただく時が一番楽しいと思うので、それまでは本当にずっと闘っていくっていう感じですかね」と話しつつ、「唐さんの戯曲で、演じる皆さんもすてきな俳優さんばかりです。劇場に足を運んでくださる方々がいい作品を観れたなと思って2021年を終わってもらえるような時間や空間を提供できるよう、稽古を頑張っていきたいと思います」と決意も新たに。