不思議なタイトルからは想像もつかない重層的な物語 注目作『ザリガニの鳴くところ』<5つのポイント>
全世界累計1500万部突破の大ヒットミステリーを映画化した『ザリガニの鳴くところ』が、11月18日より全国の映画館で公開される。原作ファンから期待の声が相次いでいる本作より、何が一体ファンを魅了しているのか、その注目ポイントを紹介する。
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■指紋も足跡もない殺人事件!? 犯人はたった一人で生きる少女?
物語は1969年、ノースカロライナ州の湿地帯で、将来を期待されていた青年・チェイスの遺体が見つかるところから始まる。警察は事故の可能性も視野に入れつつ、遺体発見現場にチェイスの指紋も足跡もないことから殺人事件として捜査を始める。やがて容疑者として浮上したのは、湿地帯でたったひとりで育った無垢な少女カイアだった。
カイアは6歳の時に家族から見捨てられ、学校にも通わず、自然から生きる術を学んで生き抜いてきた。町の人々との交流もほとんどなく、「湿地の少女」と呼ばれて差別されてきた彼女は、殺人事件の容疑者として裁判にかけられることになる。
法廷では彼女がどうして一人ぼっちになってしまったのか、その想像を絶する半生が明らかになっていく。果たして彼女は本当に犯人なのか? 事件の真相にたどり着いたとき、タイトル「ザリガニの鳴くところ」に込められた本当の意味を知ることになる。
■アメリカで2年連続最も売れた本になり、日本でも本屋大賞第1位に
2018年に動物学者ディーリア・オーエンズの処女作として発売された原作小説は、不思議なタイトルからは想像もつかない、重層的で奥行きのある物語を紡ぎ上げている。ひとつの殺人事件をめぐる息詰まるミステリーであるだけではなく、湿地帯で自然に抱かれてたくましく生きる少女カイアの姿、彼女が抱いた初恋の行方、そして湿地を中心とした残酷で美しい自然の表現など、読みどころに溢れている。
本書は発売翌年に全米中で大ヒットとなり、2019年&2020年の2年連続でアメリカで最も売れた本になった。さらにスウェーデン、ドイツでも2021年に最も売れた本となり、全英図書賞年間最優秀ページターナー賞をはじめとする複数の賞を受賞。日本でも2021年に本屋大賞翻訳小説部門第1位、このミステリーがすごい!第2位、2020年週刊文春ミステリーベスト10第2位など、多くのランキング上位に登場した。
■原作ファンのテイラー・スウィフトが自ら進んで楽曲を制作
全世界的に注目される本作は、有名人たちも虜にしている。世界的シンガーソングライターのテイラー・スウィフトもその一人だ。彼女は本作の映画化が発表されると自ら楽曲の制作を申し出て、「真夜中に一人で書いた」というオリジナル・ソング「キャロライナ」を発表。「この魅力的な物語に合うような、心に残る美しい曲を作りたかった」と語っている。
また、日本では島本理生、池澤夏樹、宮部みゆきといった作家や、池上冬樹、江南亜美子といった書評家たちがこぞって原作の小説を絶賛。本好きからの支持も厚く、いまなおアマゾンレビュー★4.8(9月13日現在)と高評価が続いている。