宮沢りえ主演『アンナ・カレーニナ』、“破滅”と“希望”を見据える公演ビジュアル解禁
■フィリップ・ブリーン(演出)
2019年の『罪と罰』以来私は日本に帰ることができます。パンデミック前の多くのプロジェクトがそうであるように、『アンナ・カレーニナ』も2019年の半ばに台本の作業が始まり、ようやく公演が実現します。
ヨーロッパも日本も多くのことが変わりましたが、トルストイが探求している、何が私たちを人間たらしめているかー生誕、死、結婚、戦争、出産、憧れ、愛、欲望-は世界が変わっても永遠に変わりません。この偉大で壮大な小説は奥深い感情に満ちていて、世界文学史において比類なきものであり、私たち人類に共通する人間らしさを思い出させてくれます。それはこの不確かで困難な時代にこそ大切にされるべきものです。未だかつてないほどにこの「ワールドシアター」と言うアイディアがとても重要に思えます。
今回は素晴らしい宮沢りえさんとコラボレーションできることを特に楽しみにしています。彼女が演じるのはこの作品のタイトルロールであり、彼女のことを思いながら上演台本を書き、そして3年以上も演じるのを待って下さった役です。演出家として、稽古場で彼女とのワークを始めるのが待ち遠しくてたまりません。
更に翻訳の木内宏昌さんはその匠の技を持って3つの文化と言語を紡いで、トルストイの偉大な小説をもとに私が書いた戯曲をしっかり正確に表現する日本語の台本を生み出してくれます。日本の観客の皆様には、悲劇的で、優しくて、時にすごく滑稽で、でも究極的には深くて鮮やかで、散らかった人間の姿をご覧いただけることと思います。国際的な文化を超えたコラボレーションがこんなにも必要で大切だと感じたことはありません。稽古が始まるのが待ち遠しいです。