映画作家ジャン=リュック・ゴダールの謎に包まれた人生を紐解くドキュメンタリー 『GODARD CINEMA』9.22日本公開決定
20世紀で最も重要な映画作家のひとりであるジャン=リュック・ゴダールの謎に包まれた作家人生を紐解くドキュメンタリー『GODARD CINEMA(英題)』が、9月22日より公開されることが決定。たばこをくゆらすゴダールをモノクロで捉えた海外版ポスタービジュアルが解禁された。
【写真】作品にはゴダールの名作も数々登場
フランス映画界で革新的なヌーヴェル・ヴァーグを先導し、20世紀で最も重要な映画作家の一人と称されたジャン=リュック・ゴダール。本作は彼が、2022年9月13日に91歳で自らこの世を去る直前に製作され、第79回ヴェネツィア国際映画祭のノンフィクション・クラシック部門で上映されたドキュメンタリー。映画史における伝説であり、謎に包まれたゴダールの作家人生を紐解く本作が、ゴダールの訃報から約1年後となる9月22日に日本で公開される。
監督・編集は、ドキュメンタリーの編集を数多く手掛けてきたフランスの映画監督シリル・ルティ。本編には、『勝手にしやがれ』(1960)、『女と男のいる舗道』(1962)、『気狂いピエロ』(1965)、『彼女について私が知っている二、三の出来事』(1967)、『中国女』(1967)をはじめ、商業映画との決別を宣言した「ジガ・ヴェルトフ集団」時代から『ゴダールの映画史』(1988~98)まで、ゴダール作品の映像の数々が豊富に登場。
さらに、家族や友人、元パートナーたちによる証言のほか、女優のマーシャ・メリル、ジュリー・デルピー、ナタリー・バイ、ハンナ・シグラ、映画監督ロマン・グーピル、批評家ティエリー・ジュスら豪華な顔ぶれによる新たなインタビューも収めるなど、貴重な映像で構成されている。
ジャン=リュック・ゴダールは1930年、フランス・パリ生まれ。映画批評家として出発し、数本の短編を撮ったのち、『勝手にしやがれ』(1960)で長編デビュー。同作は「映画の革命」と呼ばれ、世界の映画界に衝撃を与えた。1960年代はアンナ・カリーナとの蜜月から生まれた『女は女である』(1961)、『女と男のいる舗道』(1962)、『はなればなれに』(1964)など、「カリーナ時代」と呼ばれる作品群を発表。
1965年にはヌーヴェル・ヴァーグの最高傑作と評される『気狂いピエロ』、1967年に『中国女』を製作するが、五月革命以降は『ウイークエンド』(1967)を最後に商業映画との決別を表明。『ワン・プラス・ワン』(1968)、『東風』(1970)など、より前衛的で政治色の強い作風の作品を生み出す。
1977年にスイス・レマン湖畔のロールに拠点を移し、『勝手に逃げろ/人生』(1980)で商業映画に復帰。『パッション』(1982)、『右側に気をつけろ』(1987)をはじめとする劇映画のほか、実験的なビデオ作品も数多く製作した。その後はテレビシリーズ『ゴダールの映画史』(1988~98)の製作に没頭。2014年には3D映画『さらば、愛の言葉よ』、2018年に『イメージの本』、展覧会でも作品を発表するが、2022年9月13日にスイスにて91歳で逝去した。
その91年の生涯で140本以上の映画を製作したゴダールは、映画そのもの、その真髄であり、憎まれながら、同時に崇拝されてきた。有名人で謎に包まれた男でもある彼のオーラはどこからやって来るのか。たゆまぬ自己改革を行い、避けがたく自己破壊に向かっていく、この芸術家の肖像をとらえた本作を通して、見かけよりも感傷的で、自らの芸術に宿り、時に凌駕されたジャン=リュック・ゴダールという男に出会うことができるだろう。
なお本作の公開に先駆け、ゴダールに関するドキュメンタリー『1PM-ワン・アメリカン・ムービー』が公開中、『中国女』を巡るゴダールのドキュメンタリー『ニューヨークの中国女』が4月29日より公開。また、『中国女』もリバイバル限定上映されており、4月28日からはゴダール監督の特集上映「追悼 ジャン=リュック・ゴダール映画祭」も開催される予定。本作の鑑賞に向けて要チェックのイベントとなっている。
映画『GODARD CINEMA(英題)』は、9月22日よりより新宿シネマカリテ、シネスイッチ銀座、ユーロスペース、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開。