カンヌ国際映画祭クィア・パルム賞受賞のパキスタン映画『ジョイランド』予告編&新場面写真解禁
第75回カンヌ国際映画祭にて「ある視点」部門審査員賞とクィア・パルム賞を受賞したパキスタン映画『ジョイランド わたしの願い』より、予告編、ポスタービジュアル、新場面写真が解禁された。
【動画】第75回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門審査員賞も受賞! パキスタン映画『ジョイランド』予告編
本作はパキスタンの新鋭サーイム・サーディク監督による長編デビュー作。伝統的な価値観に縛られる若き夫婦が、そこから解放されて自分らしく自由に生きたいという願いの間で、揺れ動く姿が繊細に描かれる。第75回カンヌ国際映画祭にて「ある視点」部門審査員賞とクィア・パルム賞を受賞したほか、第38回インディペンデント・スピリット賞の外国映画賞を受賞、第95回米アカデミー賞国際長編映画賞パキスタン代表&ショートリストに選出された。
アメリカの辛口批評サイト「ロッテン・トマト」では98%(批評家スコア/7月6日時点)の支持を受け、フランスやアメリカ、イギリスなどでも大ヒットを記録。ところが本国では少数の保守系団体から「LGBTQ+や、彼らとの恋愛を美化して描いた」ことが、「社会的価値観や道徳基準にそぐわない非常に不快な内容が含まれており、“品位と道徳”の規範に明らかに反する」と反発を受け、その圧力に屈した本国政府により、公開1週間前に上映禁止命令が出されるという事態に。
しかし監督や出演者らの抗議活動に加え、ノーベル平和賞受賞者のマララ・ユスフザイやパキスタン系イギリス人の俳優リズ・アーメッドらから支援の声が上がり、禁止令は撤回。逆境を乗り越えて、本国での上映が実現したことでも注目された。
パキスタンで2番目の大都市、古都ラホール。保守的な中流家庭ラナ家の次男ハイダルは、現在失業中。彼は家父長制の伝統を重んじる厳格な父から「早く仕事を見つけて男児をもうけなさい」というプレッシャーを受けていた。ハイダルの妻ムムターズはメイクアップアーティストの仕事にやりがいを感じ、家計を支えている。ある日ハイダルは、就職先として紹介されたダンスシアターでトランスジェンダー女性ビバと出会い、パワフルな生き方に惹かれていく。その恋心が、夫婦とラナ家の穏やかに見えた日常に波紋を広げていき―。
予告編は、マララ・ユスフザイ(エグゼクティブ・プロデューサー/ノーベル平和賞受賞者)の「世界中の共感を呼んでいる本作をサポートできることを誇りに思います」というコメントから始まる。「貧しいなりに尊厳は守ってきた」というラナ家の家長が、失業中である息子ハイダルに「子供はできないのか?」と男孫を催促するシーンに続き、仕事に誇りを持っている妻ムムターズが活写される。
「僕には自分がない」と語るハイダルは、ある日友人にダンサーの仕事を紹介される。踊る姿を見せると「センスがない」と劇場支配人にはバカにされるが、そこで出会ったトランスジェンダー女性ビバの美しさと自由な生き方に惹かれていく。彼女によってバックダンサーに抜てきされたハイダルは、家長から何の仕事に就いたのかと聞かれ、後ろめたさからとっさに「劇場支配人として雇われた」とウソをついてしまう。しかし家長は、ハイダルが職を得たことからムムターズに家庭に入ることを命じ…。終盤では「予想できない衝撃的な展開」(Deadline)、「繊細で感動的」(The Hollywood Reporter)といった海外メディアからの絶賛評が挟み込まれ、彼らの運命の行方に興味が高まる予告となっている。
ポスタービジュアルは、ハイダルとビバがスクーター2人乗りでラホールの街を駆け抜けるシーンと、ハイダルの妻ムムターズと義姉が異国情緒あふれるラホールの家の屋上で大家族の洗濯物を干すシーンで構成。横には「大都市ラホールの街角で、それぞれの幸福がすれ違う―」というコピーが添えられ、家族への愛がありながら、自分らしく生きたいという願いの狭間で揺れ動く2人を表現した、切なさが漂うポスターに仕上がった。
映画『ジョイランド わたしの願い』は、10月18日より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開。