永瀬正敏原案&主演、喪失と再生の物語を描く『いきもののきろく』来年3.7公開&予告編解禁
■井上淳一監督
『いきもののきろく』は、11年前、名古屋にある中川運河という今はもう使われていない運河を文化的に再開発しようという助成金で作られた、小さなご当地映画です。助成金、ご当地映画――当時からそうやって量産される映画が日本映画の質を落としているんだと批判してきました。だから、自分がそういう映画を作るのに躊躇いがありました。しかし、永瀬正敏さんから送られてきたプロットを見て、驚きました。それは、どんな条件であれ、自分たちのやりたいものを作るという意志に裏打ちされた強固な物語でした。どんな条件であれ、自分たちの信じる映画を作り続けることが、結局は今の映画状況に一石を投じることになる。この映画はそう願って、作られました。
しかし、47分の短篇はなかなか公開するすべがありませんでした。今年、師である若松孝二監督の13回イベントで上映することになった時は不安でした。映画としての賞味期限が切れているのではないかと。幸いにも、それは杞憂でした。若松さんが言っていたように、映画に時効はありませんでした。それでも、まさかテアトル新宿で公開できるとは思ってみませんでした。今はただ、あの頃、永瀬さんや僕が思っていた祈りや、今なお思い続けている願いが一人でも多くの肩に届くことを願うのみです。