70年代最大のセンセーション巻き起こした映画の裏側描く『タンゴの後で』9.5公開決定 予告解禁

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ベルナルド・ベルトルッチ監督作『ラストタンゴ・イン・パリ』(1972)の裏側を、ヒロインを務めたマリア・シュナイダーに焦点を当てて描く『Maria(原題)』が、邦題を『タンゴの後で』として9月5日より公開されることが決定。予告編とポスタービジュアルが解禁された。
【動画】傑作と言われた映画の裏側で起きていたこと―『タンゴの後で』予告編
巨匠ベルナルド・ベルトルッチ監督の代表作の一つとされる映画『ラストタンゴ・イン・パリ』。大胆な性描写と心理描写が大きな反響を呼んだこの作品の陰には、ひとりの女性の怒りと葛藤があった―。
第77回カンヌ国際映画祭に正式出品された本作は、映画の撮影現場での問題について声を上げた最初の女性の一人である、マリア・シュナイダーの波乱に満ちた人生に焦点を当て、今なお世界中で問題とされる、エンターテインメント業界における権力勾配(けんりょくこうばい)、搾取について鋭い視線を投げかけた問題作。
19歳のマリア・シュナイダーは気鋭の若手監督ベルナルド・ベルトルッチと出会い、『ラストタンゴ・イン・パリ』への出演で一夜にしてトップスターに駆け上がる。しかし、48歳のマーロン・ブランドとの過激な性描写シーンの撮影は彼女に苛烈なトラウマを与え、その後の人生に大きな影を落していく…。「70年代最大のスキャンダル」と言われた作品の舞台裏で一体何が起きていたのか?
監督はヴェネツィア映画祭での受賞経験もある新鋭ジェシカ・パルー。ベルトルッチ監督作『ドリーマーズ』(2003)でインターンとして彼との仕事を経験した彼女は、マリアのいとこであるジャーナリスト、ヴァネッサ・シュナイダーの著書『あなたの名はマリア・シュナイダー:「悲劇の女優」の素顔』(早川書房刊)と出会い、彼女の人生を映画化することを決意したという。
マリアを演じるのは、ヴェネツィア映画祭金獅子賞受賞作『あのこと』で世界的賞賛を浴びたアナマリア・ヴァルトロメイ。マーロン・ブランド役をマット・ディロンが演じている。
予告編には、才能豊かな19歳のマリアが当時、新進気鋭の監督であったベルトルッチから性的に大胆な映画を「アーティスティック(芸術的)に撮る。性表現に革命を起こす」と説得され、『ラストタンゴ・イン・パリ』に出演する姿が。マリアの体当たりの演技、そして大スターのマーロン・ブランドとの共演は、彼女を一瞬にしてスターダムに押し上げるが、それは彼女の望んだ形ではなかった…。「彼らに強いられた」と語るマリア。70年代当時、「芸術か? 猥褻(わいせつ)か?」と話題になった作品が、本作では「芸術か? 暴力か?」と現代の我々に問いかける。
ポスタービジュアルは、キスシーンを演じるマリアとブランドの目前にカチンコが配された、ベルトルッチ監督の目線で示されたデザイン。マリアは冷徹な視線で見つめられており、彼女の不安が感じられるようなポスターとなっている。
パルー監督は「マリア・シュナイダーの物語は私にとって特別でした。私は誰かを責めたり、裁いたりするのではなく、この出来事の『遺産』に向き合いたい。そして、彼女の視点を通して、この社会を新たな角度から描き出したいのです。まずは『異常だったこと』を認識すること。それが、最初の一歩です」とコメント。
本作には、『ラストタンゴ・イン・パリ』の時は存在しなかったインティマシー・コーディネーターとして、パロマ・ガルシア・マーティンスが参加。パルー監督や主演のアナマリアも、彼ら・彼女らの存在が作品作りにとって非常に重要であったと述べている。
今回、日本でインティマシー・コーディネーターとして活躍する浅田智穂氏から本作に寄せたコメントも到着。浅田氏は「マリアからの『視線』に、私たち観客は何を思うのか。私たち作り手は彼女に何を問われ、どう自問すべきなのか。かつてマリアに向けられた様々な『視線』の中で、彼女が戦い、傷つき、それでも生きてきた姿を目にした今、私たちは彼女の『視線』から目を逸らすことなどできないのだ」と語っている。
映画『タンゴの後で』は9月5日より全国公開。