『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』『ノロイ』…ファウンド・フッテージ・ホラーの次なる衝撃作『シェルビー・オークス』に注目
『ロングレッグス』『THE MONKEY/ザ・モンキー』のスタジオ・NEONが放つ最新ホラー映画『シェルビー・オークス』(12月12日公開)より、特別映像が解禁。併せて、『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』(1999)から世界的ブームとなったファウンド・フッテージ・ホラーの系譜を継承しつつ、次なる衝撃を生んだ本作の新たな挑戦に迫ってみよう。
【写真】血まみれのビデオテープ、不安げなライリーの姿・・『シェルビー・オークス』心をざらつかせる場面写真
本作は、YouTubeチャンネル登録者数200万人を超えるクリス・スタックマンの初監督作。米最大手クラウドファンディングサイトKickstarterでホラープロジェクト史上最高額となる130万ドル以上を集め、「エクソシスト」シリーズ最新作、『アッシャー家の崩壊』のマイク・フラナガンをエグゼクティブプロデューサーに迎え完成した。
オハイオ州の廃虚と化した町シェルビー・オークスで、人気ホラー実況チャンネル「パラノーマル・パラノイド」のMCライリー・ブレナンが突然姿を消した。事件は未解決のまま、12年後、妹の行方を追う姉ミアのもとに失踪の瞬間を映した一本のビデオテープが届く。
映像を手掛かりに事件の真相を探るミア。現場に残った奇妙な刻印、幼少期の悪夢、呪われた町の歴史、言い伝え…、すべての謎がひもとかれたとき、たどり着いたのはあまりにも恐ろしい事実だった―。
本作もその系譜に連なる“ファウンド・フッテージ・ホラー”とは、登場人物が実際に撮影した映像や、誰かが残した記録媒体を、発見した映像として提示する形式のホラー作品を指す。手ブレのあるカメラワークや暗所での撮影、ノイズ交じりの音声など、いわゆる未編集の生素材のような質感が特徴で、観客に強い臨場感と現実味を与える。
物語は、行方不明事件や不可解な出来事、超常現象などの記録された痕跡を追う形で展開され、映像に意図せず“映ってしまったもの”が恐怖を引き起こしていく。作り物だと感じさせないリアルな空気感が魅力で、日常に侵食してくるような生々しい恐怖が、このジャンルの大きな特徴といえる。
そんなファウンド・フッテージ・ホラーは、1999年公開の『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』の世界的ブームによって人気が確立。「魔女伝説を題材としたドキュメンタリー映画を撮影するために森に入り、その後行方不明となった3人の学生が残した映像」という設定、またPOV視点(主観視点)により、低予算ながら、フィクションとリアリティの境界が崩れるような、かつてない臨場感のある恐怖をもたらした。
日本映画においてこのジャンルの作品として挙げられるのが、2005年に公開された白石晃士監督作『ノロイ』。「怪奇実話作家が、数々の怪現象の謎を追ったドキュメンタリー“ノロイ”を完成させると、失踪を遂げてしまう」というストーリーで、“不思議な音”“超能力を持つ少女”“呪いの電波”“集団自殺”といった超常現象の生々しい記録が観る者を身震いさせ、さらにそれぞれの関連性を疑い始めると得体の知れない恐怖に包囲されていく。
今年公開された白石晃士監督作『近畿地方のある場所について』の原作・背筋氏も、元々『ノロイ』の大ファンで大きな影響を受けたと公言しており、国内外でカルト的な人気を誇っている。
同じく今年公開された近藤亮太監督作『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』も、「主人公・敬太は、幼い頃、自分と出かけた山で弟が失踪するという過去を持ち、現在はその経験から、失踪した人を探すボランティア活動をしている。ある日、疎遠だった母親から古いビデオテープが送られてくるのだが、そのビデオテープには、弟が失踪する瞬間が映っていて…」という物語。
多くのJホラーファンを釘付けにしたこの作品は、VHSテープという古い記録媒体の画質、質感、ノイズ感を重要な演出要素として使っており、粗く揺れる映像、VHSの低解像度が“理解の限界ギリギリ”の恐怖感を与える。また、静かで緊張の走る場面、音響設計、環境音にこだわっており、見えないもの、聞こえないものを恐怖の核として扱っている点、ジャンプスケアに頼らない、例えば主人公の後ろの家に映る人影など、よく見れば分かってしまう違和感が観る者に深い恐怖を植え付けた。
そんなファウンド・フッテージ・ホラーの恐怖の系譜を継承しつつも、次なる衝撃を生んだのが『シェルビー・オークス』。スタックマン監督は、本作を製作する上でインスピレーションを得た作品として『ノロイ』を挙げている。
「失踪した妹の行方を追う姉ミアのもとに、失踪の瞬間を映した一本のビデオテープが届いて…」というあらすじは、『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』と酷似しているが、これはスタックマン監督と近藤亮太監督がまったくの同世代、かつ無類の映画好きであるという共通点を持ち、生まれ育った国の違いはあれど似たような映画的バックグラウンドを持っているが故の偶然の一致である。
この奇妙な符号には、近藤監督も自身の公式Xで「笑っちゃうくらい同時代性を感じた」と明かし、「自分がアメリカで生まれ育ったら『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』はこういう映画になっていたのかも」と語っている。
今回解禁となった特別映像について、スタックマン監督は、ファウンド・フッテージシーンのリアルさを追求するため「当時の本物のビデオカメラを用意し、MiniDVテープで撮影を行いました。編集作業も、あえて2007年製の古いiMacで行いました。徹底して『本物らしさ』を出したかったんです」とコメント。
さらに「これまでにないアプローチでファウンド・フッテージというジャンルに挑戦したいと考えました。ファウンド・フッテージと、伝統的な劇映画の手法を共存させることで、両方の長所を活かすことを目指しました」と、本作における新たな挑戦について明かした。
唯一の手掛かりであるビデオテープには、粗い画質で妹の失踪に繋がる衝撃的な映像が映し出される。このテープがきっかけで物語は大きく動いていくのだが、姉がたどり着こうとすればするほど、真実はあまりにも残酷で禁断的な方向へと転がっていく――。日米、そして世代を超えて連なるファウンドフッテージホラーの恐怖の遺伝子を、スクリーンで目撃したい。
映画『シェルビー・オークス』は、12月12日より全国公開。

