“問題はここから始まる”『長いお別れ』父の誕生日を祝う食卓シーン本編公開

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女優の蒼井優、竹内結子、松原智恵子、俳優の山崎努が家族を演じる中野量太監督の最新作『長いお別れ』より、本編映像が解禁。美味しそうな手料理が並ぶ食卓で、父・昇平の誕生日を祝う場面が収められている。
【写真】美味しく見えるようにこだわった『長いお別れ』食卓に登場する料理
本作は、直木賞作家・中島京子の同名小説を、日本アカデミー賞ほか国内映画賞34部門を受賞した『湯を沸かすほどの熱い愛』の中野監督が、自身のオリジナル脚本により実写化。認知症を患った元中学校校長の東昇平(山崎)、献身的な妻の曜子(松原)、人生の岐路に立たされている2人の娘・芙美(蒼井)と麻里(竹内)の物語が描かれる。
今回解禁された本編映像は、父・昇平の70歳を祝う誕生日会のシーン。食卓には、カフェを開く夢を持つ次女・芙美が作った手料理が並び、母の曜子が久しぶりに実家にそろった娘2人の近況を聞き出す和やかなやりとりが流れる。
しかし、娘2人の視線は父の姿に釘付け。読書好きで厳格だった父がなぜか、ポテトサラダのアクセントとして入れていたレーズンをひたすら抜き出したり、芙美と麻里を間違えたり、自分の誕生日であるのを忘れてしまったりと、奇妙な行動を取り続ける。この日を堺に、昇平の記憶は少しずつ失われていく。
どこの家庭にもある平凡な食卓風景から物語をはじめることについて、中野監督は「問題はここから始まるぞ」というズレみたいなものを上手く演出したかったんです」と明かす。続けて「食べるという行為は、人が“生きる”行為ですよね。あと、“食卓を囲む”ということを、僕はこれまでの作品でもやってきたんです。誕生日に家族が昇平を囲みますよね、あれが基本なんですけれど、その基本が崩れるところから物語は始まるんです」ともコメント。映画の中で丁寧に“食”を描くという、中野監督作品の特徴のひとつがよく表れているシーンとなっている。
原作では三女がフードコーディネーターという設定だが、映画では芙美がカフェを開く夢を追いかけながら、フードトラックで移動販売をしているという設定に変更されている。撮影現場には、実際にフードコーディネーターの小森真梨子が立ち会い、家庭で作られる料理に対しても「美味しく見せたい」と細やかな演出が施されている。専門は卵料理の研究という経歴を持つ小森が作り出した、劇中前半に登場するアイテム“出し巻き玉子”にも注目だ。
映画『長いお別れ』は5月31日より全国公開。