『ティファニーで朝食を』映画化の裏側も 『トルーマン・カポーティ』本編映像公開
20世紀の米文学を代表する作家の素顔に迫るドキュメンタリー映画『トルーマン・カポーティ 真実のテープ』の日本公開に合わせ、カポーティ原作の名作映画『ティファニーで朝食を』(1961)製作の裏側が明かされる本編映像が解禁された。
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本作は、『ティファニーで朝食を』や『冷血』で知られる作家カポーティの栄光と転落を振り返る文芸ドキュメンタリー。オバマ政権のソーシャル・セクレタリーを務めた経歴を持つイーブス・バーノーの監督デビュー作となる。
『ティファニーで朝食を』『冷血』の大成功を経て長年出版が待ち望まれたカポーティの新作『叶えられた祈り』は、ニューヨークの上流階級の実態を描いた最高傑作となるはずだった。しかし第一部が発表されるやいなや、そのスキャンダラスな内容によって激しい論争を巻き起こす。社交界から追放され、多くの友人を失ったカポーティは、アルコールと薬物中毒に苦しみ、作品の完成を待たずしてこの世を去ることとなる。栄光から転落へ、死後36年を経て、未完の問題作『叶えられた祈り』執筆の裏側が明かされる―。
解禁された本編映像は、映画『ティファニーで朝食を』の映像と劇中歌「ムーン・リバー」のメロディーをバックに、カポーティの良きライバルであった作家ノーマン・メイラーがカポーティの印象を語る“テープ”の音声から始まる。彼の特別な才能について、メイラーは「文章だ。最高に素晴らしい。同世代で敵う者はいない。当時のNYをあれほど見事に描いた小説があるか? 時間と場所をとらえるセンス。誰より息の長い作家になる」と絶賛する。
だが、原作者カポーティが描いたヒロインのホリーは、小説とはまるで別人のように描かれていることが明らかに。作家で批評家のセイディー・スタインは、映画では主人公のホリーと駆け出しの作家ポールのロマンスが描かれるが、「小説はより現実的でもっと中身がある。もちろんロマンスはない」と評した。
さらに、映画のラストシーンの映像と共に、映画の脚本を担当したジョージ・アクセルロッドが「小説ではここは“行っちまえ!”だし、最後は彼女が1人で去る」と原作との大きな相違点を指摘する。このラストシーンに「トルーマンは激怒してたよ。『ムーンリバー』のハッピーエンド」だと、苦笑いする。オードリー・ヘプバーンが新境地を拓いた映画史に残る傑作だが、実は原作者カポーティはお気に召さなかったというのだ。
毒舌とユーモアで知られるカポーティは黙っていない。映像では「ティファニーから電話が来た。宣伝のために朝食の食器セットを送ってくれると言うんだ。僕は“純銀か純金なら“と答えたよ」と皮肉なジョークで周りを笑わせている。
映画『トルーマン・カポーティ 真実のテープ』は、11月6日より全国順次公開。